■森林地帯では野良犬に毎日ペットフード1トン

 動物たちは、医療センターで保護期間中に新たな引き取り手が見つかった場合を除き、治療やケアが終わるとマイクロチップを装着されて元いた場所に戻される。

 イスタンブールでは、このサービスを通してケアを受けた動物は2018年に7万3608匹に上る。2004年の2470匹に比べると大幅増だ。

 獣医師と動物看護師100人を抱えるイスタンブール市当局によると、2016年以降、同市内では狂犬病の発生件数は皆無だ。

 ベキル・パクデミルリ(Bekir Pakdemirli)農業・森林相は先月、同省は2009年から昨年までの間に、野良犬・野良猫の保護を支援するため全国の自治体に3100万トルコリラ(約5億6000万円)を拠出したことを明らかにした。

 イスタンブール市内の野良犬・野良猫は多くの場合、餌を十分にもらっている。だがIBBの獣医師ウムト・デミル(Umut Demir)さんは、イスタンブールの欧州側にある「ベオグラード(Belgrad)の森」と呼ばれる地域を巡回しながら、市を囲むこの森林地帯には「野良犬が独力で餌を得られる場所がない」と話す。

 そのため、ここには毎日約1トンのペットフードを積んだバンがやって来る。クラクションの音が聞こえると、野良犬たちはバンに向かって走り出す。

 スルタンガーズィー(Sultangazi)地区の医療センターで獣医師の代表を務めるトゥーチェ・デミルレック(Tugce Demirlek)さんは、たっぷり餌を与えて世話をすれば、野良犬も野良猫も気性が穏やかになり、攻撃的な行動を取らなくなると話した。

 だが、不妊・去勢手術を行っているにもかかわらず、この数年間、野良犬の数は横ばいだ。「計画的に手術を行っているが、捕まえられない犬たちが繁殖を続けている」とデミルレックさんは説明した。

 イスタンブールでは毎年、野良犬の子が生まれている。ここ最近でも、生後わずか40日ほどの子犬が道端でクンクン鳴いているのが見つかった。診察を終えてマイクロチップを装着された子犬は、飼い主を募集するために早速「動物診療バス」に写真が掲示された。(取材していた日の午後は)気に掛ける人は大勢いたが、引き取り手はまだ見つかっていない。

「明日も望みを懸けてみる」とディンチェルさんは話した。(c)AFP/Luana Sarmini-Buonaccorsi