■広島の原爆の1000倍のエネルギー

 衝突に備えるという方法が唯一残された。

 衝突まで6か月の時点で、専門家らは小惑星がニューヨークに向かっているという予測しかできなかった。残り2か月で、ニューヨークが破壊されることが確実となった。

 小惑星は時速6万9000キロという猛烈な速度で大気圏に突入し、ニューヨークのセントラルパーク(Central Park)の15キロ上空で爆発。この爆風のエネルギーは広島に投下された原子爆弾の1000倍に及んだ。

 衝突により半径15キロの「生存不能」範囲にあるあらゆるものが破壊されると、科学者らは指摘した。マンハッタン(Manhattan)は壊滅し、爆発地点の周囲45キロの窓ガラスは粉々になり、被害は衝突の中心地から68キロ離れた範囲にまで及ぶと予測された。

 今回のシミュレーションにより、無数の課題が浮き彫りになった。

 当局は1000万もの人をどのように避難させるのか。米国は実際、ハリケーンで人々を安全な場所に避難させることに苦労した経験があり、大人数の避難の難しさが指摘されている。

 また、費用の負担者、避難を余儀なくされた人の受け入れ先、原子力施設や化学施設、美術品などの保護といった課題も挙げられる。さらに、世界の終わりに直面した時、人々はどのような行動を取るのかということも問題となる。

 今回のシミュレーションのシナリオを設計したNASAの技術者、ポール・チョーダス(Paul Chodas)氏はAFPの取材に対し、小惑星の衝突が現実となる可能性はもちろん極めて低いと語った。「だが、われわれは問題を明らかにし、議論をする必要があると考えた」 (c)AFP/Ivan Couronne