■「90年代の空気」

 フランスのモンサンミシェル(Mont Saint-Michel)近郊にあるミュラン(Mulann)は昨年11月、20年ぶりに音楽用カセットテープの製造を再開した。同社は製造工場を買収し、レコーディング・ザ・マスターズ(Recording The Masters)というブランド名でカセットテープを製造している。

 同社の最高経営責任者(CEO)ジャンリュック・ルヌー(Jean-Luc Renou)氏は、今日の移り変わりの激しい音楽業界でも、アナログオーディオの出番はあると指摘する。

 販売部門責任者テオ・ガルディン(Theo Gardin)氏によると、ミュランでは1本3.49ユーロ(約440円)のカセットテープを毎月数千本生産しており、その95%は海外へ輸出している。

 27歳のガルディン氏は、ポータブルカセットプレーヤー「ウォークマン(Walkman)」を実際に使ったことや、絡まったテープをペンや指で巻き直さなければいけない苦労を経験したことはないと認める。

 ステップ氏によれば、ガルディン氏のような20代の若者は現代のインターネットの時代に目に見えるものを求めており、このような若者の間で需要が急速に高まっているという。

 米ファッションブランド「アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)」はウェブサイトで、ミックステープの作り方を詳しく説明している。「ラジオの前に座って、自作のミックステープに加えるため(米バンド)ハンソン(Hanson)の曲がかかるのを3~5時間待った経験がないのなら、そういう経験をしてワクワクしよう」「90年代の空気に浸ってみよう」と呼び掛けている。

■ほぼ全滅からの復活

 調査会社ニールセン・ミュージック(Nielsen Music)によると、米国のカセットテープアルバムの売り上げは2017年の17万8000本から昨年は23%増の21万9000本と急速に拡大した。

 1994年の売り上げ2億4600万本とは比べ物にならないが、2000年代半ばまでにほぼ全滅していたことを考えれば注目に値する数だ。(c)AFP/Maggy DONALDSON, with Benjamin Massot in Avranches, France