【4月20日 MEE】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)ガザ市(Gaza City)にある現代的な建物に、目を引く白い横断幕が掲げられている。そこにあるのは「ガザ初の女性ヨガ・サーカス拠点」との言葉。この施設は昨年、イスラエル軍による封鎖や電気切断、攻撃のさなかに設立され、以来、静寂を求める女性や少女数百人のオアシスとなっている。

 共同設立者のアマル・ハヤル(Amal Khayal)さんは「体を動かすことにより、ガザの女性たちが何年にもわたり受けてきた心理的なプレッシャーを和らげることを主な目標としています。またこの厳しい環境で、女性たちが互いを支え合えるネットワークをつくっています」と語る。

 ハヤルさんによると、施設の構想が出たのは2016年で、アイルランド人支援活動家のスーザン・チャーチ(Susan Church)さんがパレスチナ人の同僚たちに対し、ストレス緩和のためにヨガを教えたことがきっかけだった。同じくアイルランド人支援活動家のジェニー・ヒギンズ(Jenny Higgins)さんは次に、パレスチナ人の同僚にエアロビクスとソーシャルサーカスを教えた。

 ハヤルさんが新施設の構想を複数のNGOに持ち掛けたところ、「アイシャ女性子ども保護協会(Aisha Association for Woman and Child Protection)」が名乗りを上げた。資金援助によってこれまでに、看護学や理学療法学、心理学の学士号を取得した女性30人の訓練を実施。現在、うち16人はヨガを、残りの女性たちはサーカス芸を教えている。

 しかし、このプロジェクトに対しては、世間の抵抗もあった。ハヤルさんは「ヨガと瞑想(めいそう)を混同し、同じものだと考える人もいました。極端な人からは、私たちがヨガを通してヒンズー教を広めようとしているとも言われました。そこからどんなトラブルが起きたかは想像できるでしょう」と述べる。

 イスラエルのガザ封鎖も障壁となった。ハヤルさんは「ヨガの道具は言うまでもなく、基本的な物資の輸入ですらほぼ不可能な状態でしたが、外国の支援員たちが一般の手荷物としてヨガやサーカスの道具を運び込んでくれました」と振り返る。施設は現在、大勢の女性たちに利用され、ドメスティックバイオレンス(DV)やトラウマについての啓蒙(けいもう)活動の場にもなっている。

 またハヤルさんによれば、スタッフの多くが心理学の専門教育を受けており、紛争のトラウマや家庭内の問題を抱えた利用者の支援に当たっている。施設は先月、フランスやベルギー、ポーランド、フィンランド、カナダの外交官を招待した。「ガザには、元通りの生活が送れるようになれば生き生きと成長できるようなポテンシャルと人材があることを、世界中の人たちに見てほしいです」とハヤルさんは語った。

By Walid Mahmoud

(c)Middle East Eye 2019/AFPBB News