■核の遺産

 クレイソン氏によると、研究チームは2011年の福島第1原発事故に由来する一部の放射性降下物も検出したという。だが、この原発事故に由来する粒子の大半はまだ氷成堆積物に集積していないと、クレイソン氏は述べる。

 原発事故だけでなく、核実験によって生成された放射性物質も数か所の調査対象地で検出されている。

 これについてクレイソン氏は、「核爆弾が開発されていた時代にさかのぼる1950~1960年代以降の核実験に由来するもの」と話し、「堆積物コアを採取すれば、チェルノブイリが起きた時に明らかな急増を確認できるが、大規模な核兵器実験が行われていた時期の1963年前後にも極めて明確な急増が確認できる」と説明した。

 人為的な核活動による、潜在的に最も危険な残留物の一つがアメリシウムだ。アメリシウムはプルトニウムが崩壊する際に生成される。プルトニウムの半減期は14年だが、アメリシウムの半減期は400年を超える。

 クレイソン氏は、「アメリシウムはプルトニウムより環境中で水に溶けやすく、より強いアルファ(放射)線を発する。食物連鎖に取り込まれることに関しては、どちらも有害だ」と指摘する。

 そして、「これらの物質は、人類が大気中に放出したものの生成物だ。これは人類の核の遺産がまだ消えておらず、依然としてそこに存在することを示している」と強調した。(c)AFP/Patrick GALEY