【4月17日 AFP】フランスの首都パリにあるノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)を襲った火災では、炎に包まれた現場から貴重な文化財の多くを救い出した消防隊員らを称賛する声が上がっている。ただ当局によれば、大聖堂内にあった作品には危険な状態にあるものや、火災によって完全に焼失してしまったものもある。

 ノートルダム大聖堂は、建物自体が中世建築の傑作とされているのに加え、大聖堂内には西洋美術の名作や聖遺物も収蔵されていた。救急隊員と教会関係者らは15日夜、バケツリレー方式を用いてできるだけ多くの文化財を救い出した。

 以下は、これまでわかっている被害状況。

■聖遺物

 イエス・キリスト(Jesus Christ)が十字架刑に処される際にかぶっていたとされる聖遺物「いばらの冠(Holy Crown of Thorns)」は無事運び出され、現在はパリ市庁舎で保管されている。消防隊はさらに、後に聖人となった13世紀の国王ルイ9世(Louis IX)が着用していたとされるチュニックも救い出した。

 15日の火災で崩落した尖塔には、いばらの冠の一部と、パリ市民の間で広く尊ばれている聖人2人、聖ドニ(Saint Denis)と聖ジュヌビエーブ(Saint Genevieve)の遺物があった。

■パイプオルガン

 15世紀に製造されたオルガンは数世紀かけて拡張され、現在では8000本近いパイプを有するフランス最大級のオルガンとなった。ノートルダム大聖堂に3人いるオルガン奏者の一人で、同大聖堂で35年にわたり演奏してきたフィリップ・ルフェーブル(Philippe Lefebvre)氏は、オルガンに火の手は及ばなかったものの、オルガンの構造が損傷を受けた恐れがあると説明。オルガンの一部ががれきやほこり、水に覆われたと話している。

■ステンドグラス

 同大聖堂が誇る「ばら窓」3つは、ステンドグラスで作られた円形の窓で、13世紀の建造以来、数回にわたり修復されてきた。16日時点で、南側の窓と、西側正面の2つの鐘楼の間に位置する窓の計2つが無事となっている。フランク・リーステール(Franck Riester)文化相は、ばら窓は「破滅的な損害を受けなかったようだ」と語った。

■聖母マリア像37体

 大聖堂内には37体の聖母マリア像が設置されている。リーステール氏は、大聖堂内の文化財については安全が確保され全面的な調査が可能になった際により詳しい状態が分かると述べている。

■絵画作品

 パリの金細工師組合は1630年から1707年の間、毎年5月1日に絵画作品1点をノートルダム大聖堂に贈呈した。76ある作品のうち、13点が大聖堂内の複数ある礼拝堂に展示されていた。

 リーステール氏によれば、絵画は炎による被害は受けなかったものの、煙と水で損傷。19日にルーブル美術館(Louvre Museum)に運ばれ湿気の除去と修復作業が行われる予定だ。

■13トンの鐘

 同大聖堂で最も古い約300年前に鋳造された鐘は「エマニュエル」の名前で知られ、重さは13トンにも上る。大聖堂には2013年、9つの鐘が追加された。これらの鐘は火災を逃れたとみられている。(c)AFP/Stuart WILLIAMS