【4月2日 AFP】メキシコのロックバンドに所属するベーシストが1日、「無実を過激に宣言」するために自殺するとツイッター(Twitter)に投稿した後、死亡した状態で発見された。このベーシストの男性は、セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)を告発する「#MeToo(私も)」運動によってセクハラ行為を指摘されていた。

 死亡したのはベテランロックバンド「ボテジータ・デ・ヘレス(Botellita de Jerez)のベーシストで、受賞歴のある詩人・作家でもあるアルマンド・ベガ・ヒル(Armando Vega Gil)さん(63)。同バンドは、ベガさんが1日朝に死亡したとツイッターで報告した。匿名を条件に取材に応じた検察関係者によると、ベガさんは首都メキシコ市の自宅で遺体で発見されたという。

 ベガさんが亡くなる前日、ツイッターのアカウント「@MeTooMusicaMX」には、ベガさんが10年以上前に当時13歳の少女に性的暴行を加えたとする匿名の投稿があった。このアカウントはメキシコで最近勢いを増している「#MeToo」運動の一環だ。

 ベガさんを非難した女性は13年前、自分が熱烈なミュージシャン志望の13歳だった頃に、当時50歳のベガさんと知り合ったと記した。女性はベガさんの自宅に呼ばれ、キスを教えたいと言われるなど、ベガさんから不快な性的誘いの数々を受け、最終的にベガさんとの関係を絶ったという。

 この告発に対しベガさんは、「断固として否定する」とツイッターに投稿。この告発によって自分のキャリアが絶たれる可能性を危惧し、ソーシャルメディアでは「何を書いても、私への非難として利用される」と述べて自己弁護できないことを訴えた。

 また「この偽の告発」によって8歳の息子を傷つけたくないとも記し、「私の死は、罪の告白ではないことを明白にしなければならない。むしろこれは、過激な無実宣言だ」と訴えた。

 米映画界に端を発した「#MeToo」運動は2017年に国際的な広がりを見せたが、当時メキシコではあまり注目されなかった。しかしここ数週間で運動に火がつき、メキシコの音楽界や報道界、出版界、大学などにおいて旋風を巻き起こしていた。

 運動の支持者たちは、男性優位が根深いメキシコ国内では、被害を受けた女性たちが訴える手段がほとんどないと主張。告発した女性たちが悪意に満ちた反発を受けることも多く、司法制度の下で加害者が有罪になることはほとんどないという。

 一方、この運動に反対する人々は、ツイッターにアクセスできれば誰でも、他人のキャリアや人生さえもつぶすことができる偽の告発が可能だと指摘している。(c)AFP/Joshua Howat BERGER