■世界中に広がる記事作成の自動化

 世界中の報道機関で記事作成の自動化が広がっている。例えばノルウェー通信(NTB)では、結果を30秒以内に配信するためスポーツ記事作成を自動化した。

 米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)は、地域一帯の地震速報を配信するためのボットを開発した他、殺人事件に関する記事作成も一部自動化している。

 AP通信(Associated Press)では上場企業3000社の四半期ごとの決算報告記事を自動化している。また今年は、大学対抗バスケットボールの試合予想をコンピューターで作成・配信する計画を発表している。

 さらにロイター通信(Reuters)は昨年、一定の傾向や例外的出来事を特定し、自動でデータを分析し記者に書くべき記事を提案する「リンクス・インサイト(Lynx Insight)」の導入を発表した。

 ブルームバーグ(Bloomberg)の編集長ジョン・ミクルスウェイト(John Micklethwait)氏は昨年、同社のシステム「サイボーグ(Cyborg)」は「企業が決算報告を行うのと同時に分析」し、数秒以内に速報を作成すると明らかにした。ブルームバーグの記事の4分の1は「ある程度の自動化がされている」という。

 2015年のフランス地方議会選挙の際に、仏日刊紙ルモンド(Le Monde)と提携会社シラバス(Syllabs)はコンピュータープログラムを使って、全国3万6000の自治体の選挙結果について、ウェブサイト15万ページ分の記事を作成した。

■AI記者に調査報道は可能か?

「個別化」や地域限定化を容易にできることがアルゴリズムを活用した記事の利点の一つで、選挙結果やスポーツの試合結果の配信に活用できる。

 報道の専門家は、コンピュータープログラムに限界はあるが、時には人間にできないことを達成できることも認めている。

 米ジョージア州アトランタ(Atlanta)の地方紙アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション(Atlanta Journal-Constitution)のデータジャーナリズム部門は、医師が性的不品行により当局に通報されたり、訴えられたりした450件の事例と、うち半数の医師が免許を剥奪されていないことを突き止めた。具体的には、機械学習とAIを活用して各事例を分析し、性的不品行の確率を出し、それを記者たちが再検討した。

 複数の研究によると、自動作成した記事の大半はそのことが明記されており、読者はそのような記事を受け入れているようだ。

 米コロンビア大学(Columbia University)トウ・センター・フォー・デジタルジャーナリズム(Tow Center for Digital Journalism)の研究員、アンドレアス・グレーフェ(Andreas Graefe)氏がドイツの読者を対象に行った調査によると、人間が執筆した記事は「読みやすさ」では勝っていたが、「自動化された記事の方が信頼性は高いと評価された」。