■宇宙のように寒い

 ソ連時代の反宗教プロパガンダでは、神は存在しないことを人々に説得するために、宇宙探査の画像が使われていた。一部の旧教会はイデオロギー的に利用され、例えばレニングラード(現サンクトペテルブルク、St. Petersburg)にある大聖堂には無神論博物館が開設された。プラネタリウムに改築された教会もあった。

 ボルコダフ館長や司祭、地元住民らは、博物館となったことで同教会は破壊を免れたと説明する。教会はかつてコサック(Cossack)の村に立っていたのだが、村は1960年代に広大な貯水池を造るために意図的に水底に沈められた。そのため、教会は慎重に解体され、別の場所に移築された建物の一つだった。

 しかし今日、博物館としての全盛期はもはや過ぎ去ったようだ。展示物はみすぼらしく、内装の壁の青いペンキははげ落ちている。暖房がないため、ほとんどの来館者は夏に訪れる。建物内部の温度計は氷点下10度を示していた。羊革のコートと帽子を着こんだ職員は「宇宙みたいに寒いんだ」と冗談を言った。

■教会としての未来は…

 1991年のソ連崩壊とウクライナ独立宣言、それに続き、大半が正教会を信仰していたウクライナの宗教的自由の獲得後も、博物館の地位に変化はなかった。

 博物館について、ロシア正教会モスクワ総主教庁に忠実なウクライナ正教会の地元修道院に属するフェオドシー司祭は、ロシア正教会に返還されることを望んでいるが、新しい「ウクライナ正教会」になるのであれば、今の宇宙博物館のままの方が良いと述べる。「われわれが置かれている現在の状況から言えば、(ロシア正教会からの)分離教会よりは博物館のほうが良い」 (c)AFP/Yuliya SILINA