【3月5日 AFP】東京に住む米国人エリン・マクレディ(Elin McCready)さん(45)は、結婚19年目で、日本人の緑さん(48)との間に3人の子どもがいる。

 だが、マクレディさんが男性から性別移行をし、トランスジェンダー(性別越境者)女性となったことから、緑さんとの婚姻状態が危機に陥っている。日本は同性婚を認めていないためだ。

「私たちは事実上、制度を壊していることになる」とマクレディさんは言う。「彼らの選択肢としてあるのは、『どうぞ、あなたたちの結婚を認めましょう』と言って同性婚の前例を作るか、『あなたたちの結婚は認めません』と言って私たちの同意なく、一方的に結婚を取り消すかのどちらかだ」

 マクレディさんは性別移行の手続きの一環で昨年、米テキサス州で性別と名前を変更した。新しい米国パスポートを手に入れ、永住資格を持っている日本での在留カードの更新も問題なく行われた。

 だが、在留カードの変更には自治体への届け出が必要となる。そこで職員が、マクレディさんが結婚していることに気付き、手続きが滞った。「自治体は東京都へこの件を回し、都が国にあげたが、それ以来、委員会にかけられた状況だ。3か月以上たっている」とマクレディさんは説明する。

 言語学の教授として青山学院大学(Aoyama Gakuin University)に勤めるマクレディさんは、日本の当局にこのような特別なジレンマを持ち込んだのは自分が初めてだと思っている。

 日本の法律は、トランスジェンダーが性別を変更できるのは一定の条件を満たした場合に限っていて、それには婚姻していないこと、現に未成年の子どもがいないこと、生殖機能がないことなどが含まれている。

 最高裁は最近、これらの条件を支持する判断を下しており、トランスジェンダーが届け出上の性別を変更するには事実上、不妊手術を受ける必要がある。

 だが、マクレディさんは書類上の性別変更を日本国外で行ったが、日本国内では長らく婚姻状態にある。このためマクレディさんは、自分が明らかに特殊な立場に置かれていることに気付いた。