【2月22日 AFP】南アフリカのスポーツ相は21日、陸上女子の同国代表キャスター・セメンヤ(Caster Semenya)がテストステロン値の高い女子選手の出場資格を制限する規則に異議を唱えているスポーツ仲裁裁判所(CAS)での審理に出廷し、国際陸上競技連盟(IAAF)の規則は女性の体を侵害するものであると批判した。

 女子800メートルで通算2度の五輪制覇を誇るセメンヤが、IAAFの規則に関して提訴している一週間の審理が終わりに近づく中、南アフリカのスポーツ・娯楽相を務めるトコジレ・カーサ(Tokozile Xasa)氏は、スイス・ローザンヌ(Lausanne)にあるCASを訪れたのは同選手への支援を申し出ることが目的であると述べた。

 しかしカーサ大臣はそれと同時に、規則は他の女子選手のための「公平な競技環境」づくりに必要だと主張しているIAAFへの批判も展開し、「ここで議論しているのは、女性の体に対する侵害(について)である。女性たちは自分が(他人に)どのように見えるのか、自分で説明しなければならない」とすると、「これは南アフリカだけでなく、女性の競技参加について」も問われていると強調し、今回の審理では基本的人権が議論すべき課題だと訴えた。

 物議を醸しているIAAFの規則では、いわゆる「高アンドロゲン」もしくは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」のアスリートが女性として競技を続ける場合、テストステロンを基準値まで下げることを強要するものとなっている。

 カーサ大臣はまた、同国のシリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領からセメンヤに託されたメッセージとして、「覚えていて、あなたは偉大であるということを。覚えていて、何であろうとも忍耐という人間の精神を打ち砕くことはできないということを、あなたが私たちに常に思い起こさせるシンボルであるということを」と話し、「あなたが独りではないことを信じてほしい」と付け加えた。

 こういった訴えが行われていた間、法廷の後ろに立っていたセメンヤは、メディアに対してコメントしなかった。

 一方のIAAFは、男性と同等のテストステロン値を示しているDSDの選手は、骨や筋肉のサイズや強度で明らかに有利であることから、対戦相手にとっては極めて不公平であると訴えている。

 新規則導入で影響を受けるのはセメンヤだけでなく、リオデジャネイロ五輪の女子800メートルでセメンヤに次ぐ銀メダルを獲得したフランシーヌ・ニヨンサバ(Francine Niyonsaba、ブルンジ)、同銅メダリストのマーガレット・ワンブイ(Margaret Wambui、ケニア)も、テストステロン値が問題視されている。

 CASの裁定は3月末までに下される見通しとなっている。(c)AFP/Ben Simon