【2月20日 AFP】陸上女子800メートルで二つの五輪金メダルを獲得しているキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)が、テストステロン値を下げることを強制する国際陸上競技連盟(IAAF)の新規則について「誰の力にもならない」と訴えた。

 IAAFはいわゆる「高アンドロゲン」もしくは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」のアスリートを対象に、テストステロンを基準値まで下げることを強要する規則を導入しようとしているが、セメンヤはその正当性をめぐってスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴。18日、スイス・ローザンヌ(Lausanne)で始まったCASの審理に臨んだ。

 セメンヤの法務チームはコメントを発表し、セメンヤが「自身をはじめ規則の影響を受ける女子選手は、差別を受けることなく、女子の枠で競技することを認められるべき」であり、「遺伝的変異のある他の選手と同様、生まれ持った才能を祝福される」べきであると確信していると伝えた。

 さらにコメントには、「IAAFの規則は誰の力にもなりません。それどころか、連盟が女性アスリートの性を取り締まろうと、またしても有害で欠陥のある施策を試みようとしていることを表しています」とも書かれている。

 一方でIAAFは、規則は他の女子ランナーのための「公平な競技環境」をつくるものだと話している。連盟は「仮にDSDの選手が睾丸を有し、男性と同等のテストステロン値を示しているのであれば、思春期を過ごす中で骨や筋肉のサイズや強度も男性と同様に増し、ヘモグロビンも増加する。どれも男性の方が女性よりパフォーマンスが高いゆえんとなる要素だ」と述べている。

 新規則導入で影響を受けるのはセメンヤだけでなく、リオデジャネイロ五輪の女子800メートルでセメンヤに次ぐ銀メダルを獲得したフランシーヌ・ニヨンサバ(Francine Niyonsaba、ブルンジ)、同銅メダリストのマーガレット・ワンブイ(Margaret Wambui、ケニア)も、テストステロン値が問題視されている。

 CASの裁定は3月末までには出る見込みとなっている。(c)AFP