■最近の大統領は全員、NEAを発動

 最近の大統領は全員、NEAを発動。20以上の国家非常事態が継続中で、毎年更新されている。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元大統領は、2001年9月11日の国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)による米同時多発攻撃後にNEAを発動。割り当てられた予算を超える軍の拡充や内偵の実施、後に拷問と広く非難されることになる尋問法の採用を実現した。

 バラク・オバマ(Barack Obama)前大統領は2009年、豚インフルエンザ流行の恐れからNEAを発動。大流行を防ぐために素早く対処できるよう、当局や病院の権限を拡大した。

 しかしほとんどの場合、NEAは外国への対抗措置の中で使われている。対イラン貿易を制限するNEAによる非常事態は1979年から継続している。ベラルーシの民主主義を弱体化させると見なされた複数の人物に対応するため発動されたものは2006年から継続している。

■財源と米軍の国内出動に制約

 トランプ大統領が国家非常事態を宣言すれば、メキシコ国境に配備する人員を増やすことができる。しかし、壁を建設するには、財源となる数十億ドルを別途調達しなければならない。

 すでに認められた軍事予算内の資金を使った「軍事建設プロジェクト」の発令を大統領に認める非常事態法もある。しかし、壁建設を「軍事プロジェクト」と呼べるのだろうか? 米軍とその予算には、国内出動や国防目的外の出動に関して厳格な規制がある。ただし、緊急事態法によって認められる場合もある。

 さらに、壁を建設するには国境の大部分に接する私有地を使わねばならず、土地所有者との長期にわたる法廷闘争が起きる可能性がある。

■連邦議会の異議申し立て

 NEAは大統領の国家非常事態宣言に対し、連邦議会の異議申し立てを認めている。トランプ氏が国家非常事態を宣言した場合、民主党が過半数を占める下院で、直ちに異議申し立てが可決される見通しだ。(c)AFP