【2月6日 AFP】アルペンスキー世界選手権(FIS Alpine World Ski Championships 2019)の開幕種目である女子スーパー大回転で、転倒による途中棄権に終わったリンゼイ・ボン(Lindsey Vonn、米国)が、競技を続けるには年を取り過ぎたことを認めた。一方で引退を間近に控える34歳は、アルペンスキーの興奮が間もなく味わえなくなることへの寂しさも口にしている。

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 雲に覆われたスウェーデンのオーレ(Are)で、ボンはうねった斜面でバランスを崩して前のめりに転倒。激しくコースにたたきつけられ、そのまま安全用ネットに突っ込んだ。

 レース後のボンは、「ちょっとあざができた」「大型トレーラーとぶつかったみたいな衝撃だった。だけどそれ以外は全然平気!」と語り、現役最終戦に予定している10日の滑降出場へ問題がないことを強調した。ボンは昨シーズンのW杯滑降第8戦で、今回と同じ会場で優勝を飾っている。

「膝はレース前と同じ状態だし、首は痛くなってくると思う。胸を打って一瞬呼吸ができなくなったし、なんだかあばらが痛い。だけど大丈夫。日曜は素敵な日になる」

「あのときすぐに思ったのは、『うそでしょ、何でまたフェンスに突っ込んでいるの?』ということだった」「『なんでここに。こういうことをするには、もう年を取り過ぎた!』と思った」

 ボンは今大会限りで19年の輝かしいキャリアに幕を下ろすことを発表している。その間、W杯では総合4個を含む20個のタイトルを獲得。五輪では2010年のバンクーバー大会で滑降の金メダルに輝き、2009年の世界選手権ではスーパー大回転と滑降のスピード系種目2冠を達成した。

 その後、けがのダメージが蓄積する中で前週に引退の意向を表明したボンだが、アルペンスキーという競技を選んだ自分の決断にはまったく後悔していないという。

「私はこのスポーツが大好き」「勝つことも大好きだけど、それと同じくらい、もっと速く滑ることや、大会のスリルが大好き。滑降が大好きなのは、自分を追い込めるから。限界を追求して、そのときに出るアドレナリンがたまらないの」

「確かに滑降は安全なスポーツじゃない。みんな何度も、毎日のように転倒する。ガルミッシュパルテンキルヘン(Garmisch-Partenkirchen)でも3人がシーズン絶望になった」「健康でいたいなら他のスポーツを選ぶべき。だけど私はここまでやってきたし、できるだけ限界に挑戦してきた。今はただ、その限界に到達したというだけ。だからといって危険を冒す価値がないわけじゃないし、私はそのリスクに真正面から向き合っている」

 ボンは、ブーツを脱いだ後にはキャリア7回目の手術を膝に受けるという。「私はもうボロボロなの!」と冗談めかしたボンは「3年前から分かっていた。時間の問題だっただけ。一つ言えるのは、私の体にはもう使える部品がほとんど残っていないということ」と続けた。

「現時点で、私の体はもう品切れ状態。一生痛みと付き合っていかなければならないのは分かっているけど、どうしようもない。私にはもう膝の軟骨も、半月板もない。あるのは金属の棒と板とネジ。そういうものばかり。だけど頭はまだ無事だし、個人的にはそれだけあれば十分だと思っている」 (c)AFP/Luke PHILLIPS