【1月29日 AFP】オーストラリアのシドニーから西へ約300キロ。のんびりとした田舎町パークス(Parkes)が年に1度、鮮やかに彩られ、歌で活気づく時がある。「ロックの王様」をたたえる南半球最大のプレスリー生誕祭がここで開かれるからだ。この5日間、ここは米歌手の故エルビス・プレスリー(Elvis Presley)の邸宅「グレースランド(Graceland)」に変わる。

 熱狂的なファンたちは、プレスリーのトレードマークのポリエステルのジャンプスーツに身を包み、黒髪のウイッグをかぶり、金色のネックレスをしてイベント会場に向かう列車、「エルビス特急(Elvis Express)」と「ブルー・スエード特急(Blue Suede Express)」に乗り込む。

 町の変身ぶりはうわべだけではない。今年の「パークス・エルビス・フェスティバル(Parkes Elvis Festival)」は地元経済に1300万豪ドル(約10億1700万円)をもたらし、テーマごとに分かれた200前後のイベントに2万7000人以上を呼び込んだ。

「ただ、もうクレイジーだね」。モーテルを経営するアンドリュー・ポーター(Andrew Porter)さんは、観光客の激増について語る。「年々、盛況になり、経済全体の助けになっている」

 1月はプレスリーの誕生月。この祭典は、南半球のオーストラリアでは気温40度をも上回る真夏に開かれる。だが、1977年に42歳でこの世を去ったプレスリーは、このイベントはおろか、オーストラリアを訪れたこともない。

 しかし、ファンはそんな事実にも暑さにもめげない。フェスティバル期間中、宿泊施設の予約は数年前からいっぱいに。キャンピングトレーラー専用の公園もあっという間に埋まり、運動場にもテントがびっしりと立ち並ぶ。

「ものすごく大勢の人がこの町に押し掛け、とてつもなくたくさんのお金を使う。それは確かだ」というエルビス・レノックス(Elvis Lennox)さんは、エルビス好きが高じて改名までした。私設のプレスリー博物館を運営し、ゆかりの膨大なコレクションを公開している。