■国際社会にも「責任」

 ISはジェノサイド(大量虐殺)を行ったとして国連(UN)に非難されている。そのISによるヤジディー女性たちの扱いに対し、国際社会も「責任を取るべきだ」とムクウェゲ医師は呼び掛ける。そして「裁きがなければ、罪が問われることがなれば」、また同じことが繰り返されるとAFPに訴えた。

 国連は8月に発表した報告で、レイプ実行者の訴追と被害者の支援については、その責任がイラク政府にあるとした。その中で、ISの戦闘員と強制結婚させられた女性たちは差別に遭うリスクがあると警告していた。

 ムクウェゲ医師をイラクへ招いたのは、レイプされトラウマを受けたヤジディー女性たちの回復を支援するために2014年に創設されたNGO「ヤズダ(Yazda)」だ。

 イラク北部のクルド人自治区ドホーク(Dohuk)では25日、ヤジディー教徒のレイプサバイバーの社会的回復に取り組む人々に、専門知識や助言を伝えるワークショップが開かれ、ムクウェゲ医師もこれに参加した。

 クルド人自治区の宗教省によると、2014年には6400人を超えるヤジディー教徒がISに奴隷にされた。このうち約3200人は救出されたか、脱出に成功しているが、残りの人々の消息は不明のままだ。これからも全く確認されないケースもあるだろう。(c)AFP/Abdel Hamid Zibari