■難しい人工繁殖

 絶滅との闘いは時間との闘いとなっている。近隣の産業都市、武漢(Wuhan)市の研究施設は6頭のスナメリを引き受け、調査研究、繁殖、市民向けの啓蒙(けいもう)活動などを行っている。

 2頭のスナメリが巨大な水槽に設置された窓越しに、優雅に泳ぎ回っている。人間の姿に気付くと、からかうように体を傾ける。餌をもらう前には、ちょうどいいタイミングで口を開き、笑みを見せ、ひれをのばして握手もする。

 近くの大学の水産養殖学の学生でボランティアのリウ・ハンフイ(Liu Hanhui)さんは、「彼らは私たちにあいさつしている」と説明する。「スナメリは人間の感情を理解しているのだと思う」

 WWFによると、大人のイルカは人間の3~5歳程度の知能を持っていると言う。

 それでも、人工的な環境での繁殖は難しい。

 1980年に設立されたイルカ水族館で、今年6月に誕生したスナメリの赤ちゃんは、同水族館で生まれ、100日以上生き延びた2頭目のスナメリだった。一方、野生の場合は人間の活動や環境汚染の影響で、大人になる前に死んでしまうことも多い。

 リウさんら40人のボランティアは、週末や休日に餌やりの手伝いをしたり、さまざまな啓蒙活動に参加したりしている。

 この地域ではここ数年、保護プログラムやイベントが急増している。これらの活動は多数の企業やNGOの支援を受けており、一般の人々への啓蒙活動と、政府への保護対策強化の呼び掛けを目的としている。

 リウさんは、「人間の開発によって、急速に絶滅の危機に陥ってしまった。私は自分が人類の罪を償っているように感じている」と述べた。(c)AFP/Kelly WANG