完成間近のケベック水力発電ダム、地元民には葛藤も
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【12月28日 AFP】極寒の夜、重機が岩を削るごう音がカナダ北方の森に響きわたる――。カナダ・ケベック(Quebec)州のはるか北で、米国の北東部に送電するための「クリーンエネルギー」を発電する4基の巨大な水力発電ダムがもうすぐ完成する。
ケベック州のコート・ノール(Cote-Nord)地方の荒野を500キロ以上流れるロメイン川(Romaine River)は、4基目かつ最後の発電所の建設とともに、北緯51度の位置に建てられた文字通りの「壁」に到達しようとしている。
電力公社ハイドロケベックの建設チームは、発電所の場所を確保するために山を徹底的に削り、発電用に貯水するための全長500メートル、高さ90メートルの堤防を建設中だ。2009年に始まったダムの建設が完成すれば、先住民が所有権を主張する、カナダで最も長い、ありのままの自然が残された川に流れる冷たく透き通った水を手に入れることとなる。
ケベックには余剰電力がある。政府は、ケベックのダムで発電された電力を隣国の米国に売り、さらに少しでも地球温暖化を軽減する目的だ。
ダムが完成するのは2019年。建設エリアは数キロにわたり、セメント工場や作業員用の診療所、事務室、採石所、ダイナマイト貯蔵所で埋め尽くされている。
地域の住民にとって水力発電計画は、良くもあり悪くもある。人里離れ、経済不振の地域に新たな雇用を生んだという利点がある一方、先住民たちが古くから狩猟してきた場所が破壊されている面もある。
先住民族イヌー族の一員であり、ダム建設現場の監督を務める男性は、「最初は反対していたが、職が必要だった。最初の給料をもらったとき、建設に対する考えが変わった」と振り返る。
イヌー族の族長であり、セントローレンス川(Saint Lawrence River)北岸の保護地区に住む男性の父親は、ダムの建設に猛烈に反対しており、巨大な水力発電ダムに対して「環境破壊」だと激しく非難をしてきたグリーンピース(Greenpeace)などの環境保護団体から支持を得ている。
大学の学費を支払うために建設エリアのカフェテリアで働く24歳のイヌ―族の女性は、「私たちが自然に対してしていることを思うと、悲しくなるし痛ましい」と訴え、「でも時代は変わった。どの家庭にも今では電力が必要だ」と語った。
ケベック州では1970年代から、供給電力の9割を水力発電が占めてきた。2021年にフル運用が始まると、4基の発電所は計1550メガワットの電力を発電する。一つの市、もしくは供給予定である150万の家庭に送電するには十分な電力量だ。(c)AFP/Clément SABOURIN