■「出産ストライキ」

 韓国では今年の7~9月期、1人の女性が生涯に出産する子どもの数を示す合計特殊出生率が0.95に低下。人口置換水準の2.1を大幅に下回り、初めて1を割り込んだ。

 世界11位の経済力を誇る韓国の人口は5100万人。ただ、女性による「出産ストライキ」とも呼ばれるこの状況から2028年には減少に転じるものと予想されている。

 また、韓国には家父長制の価値観が根強く残っており、政府の調査では女性の社会進出について85%近い男性が支持すると答えている一方、自分の妻が仕事をすることに賛意を示した男性は47%にとどまった。

 さらに就職率を見ると既婚男性82%と既婚女性53%と大きな隔たりがあり、世論調査などによると20~40代女性の4分の3近くが結婚を重要視していない実情も浮き彫りとなっている。

■法的拘束力ない少子化対策に批判も

 韓国政府は2005年以降、若者に結婚や出産を奨励するキャンペーンを実施し、合計特殊出生率の改善のため136兆ウォン(約13兆4000億円)もの大金を支出してきたが、成果は出ていない。

 今月に入って政府は新たな少子化対策を発表し、児童手当を月30万ウォン(約3万円)にまで引き上げ、8歳未満の子を持つ親の労働時間を1日1時間短縮する制度も導入した。今後さらに託児所や保育園を増設し、現状3日の男性の有給育児休暇を10日にまで延ばすという。

 しかし、これらに法的拘束力はない。有給制度の利用を拒否する企業に罰則が与えられることもなく、一連の対策には批判的な目も向けられている。

 韓国女性労働者会(Korea Women Workers' Association)は声明で、「政府の政策は『もっとお金を出せばもっと子どもを産むだろう』という、あまりにも単純な思い込みに基づいたもの」と非難し、政府はまず女性たちのために「職場における無情な性差別」の解消に取り組むべきだと指摘した。(c)AFP