■不寛容

 だがその一方で、同業界での身だしなみに関する基準の中には、時代遅れのものもあるとの意見もあった。

 香港のフラッグキャリアであるキャセイパシフィック航空(Cathay Pacific)の公式ハンドブックによると、同社スタッフは、決められた色調のアイシャドーや口紅、マニキュアを利用する必要があり、さらに定期的にその状態を確認しなければならないとされている。男性スタッフにも、厳しい規定が設けられている。メークは厳禁だが、常に顔の色艶を良くしておかなければならない、というものだ。

 これについて同社客室乗務員の代表らは、来年実施予定の会社側との協議で、マニキュアの色を各自が自由に選べるよう働き掛ける予定だという。

 なお、キャセイ航空は3月、70年間続いてきたスカート着用の義務を廃止し、女性乗務員がロングパンツを選択できる制度を導入すると発表している。

 だが、「キャセイパシフィック航空客室乗務員組合(Cathay Pacific Flight Attendants Union)」代表で客室責任者でもあるドーラ・ライ(Dora Lai)さんは、男女格差の是正に向けた一歩ではあるが、一般の人々やスタッフの意識が変わらなければ、セクハラを根絶するためにできることはあまりないと語る。

 ライさんは、多くの航空会社の広告を飾っているのは美しい女性たちで、仕事の実践的スキルよりも同業界における「性的魅力」が前面に押し出されている事実を指摘しながら、「私たちの存在理由は、サービスの提供と乗客をA地点からB地点まで安全に運ぶこと」であると確認した。

 キャセイは2018年3月、香港に拠点を置く客室乗務員らを対象にしたオンライン講座を開始した。講座には新たに、セクハラに関する項目が加えられた。しかし組合側によると、セクハラ被害を報告するスタッフに不信感を抱くマネジャーが依然として存在しているという。

 匿名を条件にAFPの取材に応じたキャセイの乗務員は、ある乗客から繰り返し頭や背中を触られたことを報告した際、担当マネジャーが渋々乗客に注意したと話し、「屈辱的」だったと苦しい胸の内を明かした。

「怒りを覚えたし、悲しかった。私は被害を受けた当の本人で、(目撃した)出来事について報告したわけではない。報告後、この上司からの支えはなかった」