■手や耳で実験

 20世紀の終わりごろに、米国で最初に登場した再水和技術を完成させる目的で、エルナンデス・カルデナス氏は2004年に実験を開始した。

 この技術は当初、特定の遺体から指紋を採取できるようにするために用いられていたが、その後エルナンデス・カルデナス氏は数百に及ぶ手、耳、全身などを対象とする実験を始めた。

 2017年に特許取得済みのエルナンデス・カルデナス氏の再水和技術は、皮膚の外観を改善し、タトゥー、傷痕、特徴的なあざなどをよみがえらせる。また、体内の臓器をより詳細に観察できるようになるため、死因を特定する助けにもなる。

 死後1か月で発見されたホルヘさんの遺体に関しては、黒ずんだ遺体の左脇腹にある赤いハートの上にホルヘさんの名前が記されているのが、再水和技術によって視認できるようになった。

 前腕にあるアステカ族の太陽や「わが息子ヘスス(Jesus)」と読めるメッセージなど、その他のタトゥーを手がかりにして、遺族は遺体がホルヘさん本人であることを確認できた。メキシコの暴力犯罪との闘いで法医学者らが利用する一連の手段において、再水和はその最新の技術となっている。

 同国では現在、暴力犯罪の大半が不処罰となってしまっている。犠牲者の身元特定は、犯罪行為を証明する際に発生する一連の障害の最初の一つだ。専門家らはここでは、頭部が切り落とされたり、焼け焦げたりした遺体、さらには手足が切断されたり、200発の銃弾が撃ち込まれたりした遺体などにも対応する。

 シウダフアレスは、今年だけで1118件の殺人が起きている。メキシコの非政府組織「治安維持のための市民会議(Citizens' Council for Public Security)」がまとめた世界で最も危険な都市リストでは昨年、20位にランクされた。住民10万人当たりの殺人発生件数は56件だったという。また1993年以降、女性と少女を対象とする暴行殺人が続発していることでも知られている。(c)AFP/Hérika MARTÍNEZ PRADO