【7月6日 AFP】メキシコ南部ゲレロ(Guerrero)州の街チラパ(Chilapa)では、名字がサンチェスやナバ、カレトだというだけでトラブルに巻き込まれることがある。

 5月に300人規模の武装グループがこの街を5日間占拠したとき、10~14人が姿を消したが、そのうちの数人はこれらの名字だった。行方不明者の親族たちは、犯罪組織と警察が通じていることが多い地域の悪名高い麻薬組織のボスや元警察署長と同じ名字だったために、彼らが拉致されたのではないかと恐れている。

「自警団」を名乗る武装グループはゲレロ州では一般的で、そのうちの一つが5月9日、チラパに侵入してきた。彼らは市の警察を武装解除させ、街を封鎖した。武装グループのリーダー、ホセ・アポロニオ・ビジャヌエバ(Jose Apolonio Villanueva)氏は、チラパへ「訪問」した目的について「われわれの地区でも大勢が行方不明になっており」、それについて市長と話すことだったと語っている。最終的に彼らは連邦政府当局の説得に応じて、5月14日に街を後にした。

 住民たちによれば、武装グループには地元の麻薬ギャング「ロス・アルディジョス(Los Ardillos)」のメンバーが潜入していた。このギャングは、ライバルの組織の「ロス・ロホス(Los Rojos)」とチラパをめぐり縄張り争いをしている。人口12万人のチラパは周りの山でケシ栽培を行うヘロイン商人たちにとって、戦略的に重要なルート上にある。

 目撃者らによれば、武装グループはライフルやなたを振り回しながら街を歩き「エル・チャパロよ、降参しろ。そうすれば俺たちは出て行く」と叫んでいた。エル・チャパロとはロス・ロホスのリーダー、セネン・サンチェス・ナバ(Zenen Sanchez Nava)容疑者のニックネームだ。

 ある男性は、ピザ店での仕事を終えて店を出たところで姿を消した。トラック運転手のアレハンドロ・ナバ・レジェスさん(21)は5月10日、恋人に会うためにチラパへ行ってくると両親に告げて「二度と帰ってこなかった」と姉妹のメリッサさんはいう。サンチェス、またはナバの片方が名字に入っている若い男性4人も姿を消した。「チラパで、ナバとかサンチェスという名前をもっていることは、とても危険だ」と、行方不明者の家族会で広報係を務める教師のホセ・ディアスさんはいう。