【12月11日 AFP】中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ、Huawei)の孟晩舟(Meng Wanzhou)最高財務責任者(CFO)がカナダで拘束された事件をめぐり、中国がカナダへの批判を強めている。中国政府はカナダ当局が孟氏を釈放しなければ「重大な結果」を招くと強く警告した。過去に中国が外国に対して取った「報復」の事例などを参考に、カナダが直面する恐れのある事態をまとめた。

■輸入制限、企業人の拘束

 国家主義的な論調で知られる国営タブロイド紙、環球時報(Global Times)は専門家の話として、「重大な結果」には貿易制裁、2国間関係の悪化、中国からカナダへの観光客や経済人の訪問減少などが含まれ得ると報じている。

 調査会社チャイナ・マーケット・リサーチ・グループ(China Market Research Group、上海)の創業者、ショーン・ライン(Shaun Rein)氏は、カナダの昨年の対中輸出額が182億ドル(約2兆円)に上ったことに言及した上で、中国側にとってカナダの主要なエネルギー製品や農産物の禁輸やボイコットは「いとも簡単」だと指摘する。

 また、2年前から続けられている両国の自由貿易協定(FTA)の予備協議にも悪影響が及ぶ恐れがある。ライン氏は、中国当局が大手カナダ企業幹部の拘束に動く可能性もあるとみる。

■商品ボイコット、店舗閉鎖

 中国政府は昨年、中国の軍事能力の脅威になると考える米国製地上配備型ミサイル迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の配備に韓国政府が応じた後、韓国への中国人の団体観光を禁止した。

 THAADの配備用地を提供した韓国の小売り大手ロッテグループ(Lotte Group)も中国国民の反感を買った。ネット上でのロッテ商品のボイコットや実店舗前でのデモが繰り広げられ、ロッテ側は多額の損失を出した。

 ボイコットには中国企業数社も加わったほか、中国当局は安全基準違反を口実に国内かで20カ所以上の店舗を閉鎖させた。

■外交関係などの凍結

 2010年には、ノルウェーのノーベル賞委員会(Nobel Committee)が中国の民主活動家、劉暁波(Liu Xiaobo)氏にノーベル平和賞を贈ったことに中国は反発。ノルウェーとの関係を凍結し、FTA交渉なども中断した。

 関係悪化のあおりで、その後数年間、ノルウェー産サケの対中輸出は激減し、養殖業者は大きな打撃を受けた。

 中国との関係が正常化したのは6年後。ノルウェー政府は中国の発展の道のりと社会制度を十分に尊重し、中国の「核心的利益」を損なう行動を支持しないことを約束した。

■観光客の減少

 台湾で独立志向の蔡英文(Tsai Ing-wen)政権が2016年に発足すると、中台関係も悪化した。親中の馬英九(Ma Ying-jeou)前総統時代に中国人の観光ブームが起きていたのと対照的に、蔡政権が発足した2016年以降、中国からの訪問者は42%も落ち込んだ。

 観光業者は中国人観光客の減少について、中国メディアによる台湾についての報道が厳しくなったことや、中国の大手旅行代理店が台湾ツアーの販促を縮小したことを理由に挙げている。(c)AFP