【12月6日 AFP】米ロサンゼルスにあるJ. ポール・ゲッティ美術館(J.Paul Getty Museum)が所蔵する2000年以上前のブロンズ像「勝利した若者の像(Statue of a Victorious Youth)」の帰属をめぐり、イタリアの最高裁判所は今週、イタリアへの返還を命じる判断を下した。美術館側は徹底抗戦の構えを示している。

 この貴重なブロンズ像は、帰属をめぐって10年近くに及ぶ法廷闘争の渦中にある。ゲッティ美術館はブロンズ像について、1964年に国際水域で発見され、1977年に美術館が合法的に購入したと主張している。

「ゲッティ・ブロンズ(Getty Bronze)」の名で知られるこの像は、制作者とみられる彫刻家の名前から「リュシッポス(Lysippos)」とも呼ばれ、ロサンゼルス郊外にあるゲッティ美術館の別館「ゲッティ・ビラ(Getty Villa)」の展示品の中でも最も価値ある古美術品の一つとされている。

 しかし、アドリア海に面したペーザロ(Pesaro)の裁判所は今年6月、問題のブロンズ像を押収するよう命じる判決を下した。ゲッティ美術館は上訴したが、伊最高裁は3日、原判決を維持し上告を棄却した。

 ゲッティ財団(Getty Trust)のリサ・ラパン(Lisa Lapin)副理事長は同日、「この像に関する美術館の法的権利を引き続き守っていく」と表明。「本件をめぐる法律と事実は、この像のイタリア政府への返還を保証していない。この像は半世紀近くにわたってロサンゼルスで一般公開されてきたものだ」と述べ、いかなる没収命令も「米国内法と国際法に反している」と主張した。

 ラパン氏によると、ゲッティ美術館はこの像をドイツの骨董商から395万ドル(約4億4600万円)で購入する前、広範にわたって来歴を調査。さらにその数年前には、伊最高裁はこの像がイタリアに帰属するべきだという証拠はないと結論付けていたという。

「この像はイタリアの文化遺産ではなく、過去に文化遺産だったこともない」「イタリア市民がたまたま発見したというだけで、像の所有権がイタリアに帰属することにはならない」とラパン氏は述べている。

 一方で伊当局はゲッティ側の見解に異議を唱え、問題の像はイタリア人漁師が発見し、合法的に同国の所有物となったと主張。像は発見された後にイタリアの美術商に売却され、数回の転売を経て違法に国外に持ち出され、最終的にゲッティ美術館が購入したとしている。

 イタリアのアルベルト・ボニソーリ(Alberto Bonisoli)文化観光相は最高裁判決を受け、「米当局が一刻も早く、リュシッポスのイタリアへの返還を支持する行動を取るよう望む」と伊ANSA通信に語った。(c)AFP/Jocelyne ZABLIT