【12月6日 AFP】世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国である中国が、深刻な大気汚染を引き起こす石炭による発電を国内で抑制しようとしている一方で、石炭火力発電所をアジア・アフリカ・中東諸国へ積極的に輸出していることがAFPの調査により明らかとなった。

 石炭をはじめとする化石燃料の燃焼がもたらす地球温暖化を抑制しようという国際的な取り組みが進む中、その努力を中国輸出の火力発電所が排出する二酸化炭素が台無しにしかねないと専門家は指摘している。

 米研究機関「エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)」のエネルギー財政研究部門の責任者であるティム・バックリー(Tim Buckley)氏は、「自国経済を徐々に脱炭素化するのに必要な政策や投資を行っているという点では、中国は世界をリードしている」「しかし、国際的にみると中国は幅広い石炭事業への投資を続けており、国内のエネルギー戦略と完全に矛盾している」と指摘した。

 世界の二酸化炭素排出量の40%を石炭が占めており、石炭使用量は2014~2016年にわずかに減少したものの、現在は上昇傾向にある。また、世界全体の発電量の4割以上が石炭火力発電によるもので、この割合は天然ガスによる発電のほぼ2倍、太陽光発電と風力発電を合わせた割合の15倍に相当する。

 IEEFAによると、中国国外で建設中、もしくは建設が予定されている石炭火力発電所の4分の1が中国国営の金融機関や企業から支援を受けている。またインドを除くと、中国の支援を受ける石炭開発事業はシェア3分の1を上回る。

 国際ネットワークのコール・スワーム(CoalSwarm)のエネルギー専門家、クリスティン・シアラー(Christine Shearer)氏はこのような状況について「こうした国々が、長期的にみれば自国にとって良くないものやパリ協定(Paris Agreement)が掲げる温度目標と相いれないものに縛られる恐れがある」と指摘した。

 中国から援助を受けているエジプトやナイジェリア、ケニア、セネガル、ジンバブエ、他6か国には現在、石炭火力発電所がほとんどないか、もしくは全く存在しない。また発電に使う石炭もない。

 シアラー氏はAFPに対し、「これが意味することは、各国が輸入設備だけでなく、炭鉱すらも開発しなければならないということだ」と語った。(c)AFP/Marlowe HOOD