■「洗脳」「狂人」、難民支援に激しい非難

 難民申請が却下され、国外退去処分となる可能性に直面したアントニオ君の同級生らは、支援に乗り出した。大統領府ウェブサイトの請願ページで署名運動を立ち上げ、アントニオ君の信仰心は誠実で、教会にも通い続けていると訴えた。

 そうして得た難民認定を再申請する機会は、「天がもたらした希望の光のようだった」と同級生らは言う。1人当たりの国内総生産(GDP)が3万ドル(約340万円)ある韓国が、「人一人でさえ受け入れられないのだろうか?」と、同級生らは問いかける。最終的に請願書の署名数は3万人を超えた。

 アントニオ君が出入国管理事務所を再び訪れたときには、約50人の高校生が一緒だった。彼らは40度に迫る暑さの中、何時間も座り込みを行った。

 これに先立ちイエメンからの難民希望者約500人が、観光促進のため査証(ビザ)が不要だった韓国南部の済州(Jeju)島に流入し、難民に対する世論の反発が高まっていた。このためアントニオ君のための座り込みの参加者は、マスクで顔を隠していた。

 イエメン難民の受け入れに反対する人々は、彼らがムスリムであることを理由に挙げ、既に世界で最高水準の厳しい難民関連法のさらなる厳格化を求める大統領サイト上での請願には、史上最多の7万人の署名が寄せられていた。

 アントニオ君の同級生らは、ソーシャルメディアで「洗脳」された、「ムスリムを支持する狂人」だと非難された。

 韓国大統領府(青瓦台、Blue House)の前での抗議活動に参加していた同級生の一人、チェ・ヒョンジュン(Choi Hyun-joon)さんは「私たちや親に、オンライン上でありとあらゆる中傷と侮辱が投げ掛けられた。私たちの中で、それにおびえた人もいた」と語った。