【11月30日 AFP】フランスが子どもへの体罰禁止に動き出した。国民議会(下院)で29日、中道派議員が提出した体罰禁止法案の審議が始まり、政府もこの法案を支持している。

 法案は「体罰と辱め」に関するもので、親権の行使にあたって身体的暴力、言葉の暴力、心理的暴力など、あらゆる暴力を確実に排除することを目指している。

 フランスでは、子どもに対する体罰が広く容認されている。国連(UN )の「子どもの権利委員会(CRC)」は2016年、全ての形態の体罰を「はっきりと禁止する」ようフランスに勧告したが、状況は変わっていない。

 これまでにも体罰を禁止しようとの取り組みはあったが、保守派の壁にぶつかってきた。2016年には子どもへの体罰を禁じる法案が議会で可決されたが、無関係な法律の改正案だったため、法律の違憲審査を行う憲法会議(Constitutional Council)で無効とされた。

 歴代政府も、世論を恐れ、子どもへの体罰には極めて慎重なアプローチを取ってきた。仏調査会社Ifopが2015年に実施した世論調査では、フランス人の70%が体罰禁止に反対と答えている。

 学校内での体罰はかなり以前に禁止されたが、両親による体罰は禁じられておらず、スウェーデンやドイツなど欧州各国の失望を買っている。

 実は、今回提出された新法案でも、わが子への「しつけ」が「教育」を目的としたものであれば両親を処罰しないとされている。法案を起草した中道派政党「民主運動(MoDem)」のモード・プティ(Maud Petit)議員によれば、フランス社会に考え方を変えるよう促すためだという。

「私たちは誰でも、子育て燃え尽き症候群になり得る」し、その結果わが子を攻撃してしまうかもしれないと、2児の母親でもあるマルレーヌ・シアッパ(Marlene Schiappa)差別対策担当副大臣は29日、大衆紙パリジャン(Le Parisien)に説明。「重要なのは、(両親が)わが子に行ってきたことが子どものためにならないと自覚し、子どもと話し合うことだ」「子どもをひっぱたいた親を刑務所に入れるというのは問題外。教育が全てだ」と語った。

 英国に拠点を置く「子どもに対するあらゆる体罰を終わらせる国際イニシアチブ(Global Initiative to End All Corporal Punishment of Children)」によると、欧州連合(EU)加盟28か国中、両親によるわが子への体罰を認めているのはフランス、英国、イタリア、ベルギー、チェコの5か国のみ。今回の法案が可決されれば、フランスは子どもへの体罰を禁止する世界で55番目の国となる。(c)AFP/Charlotte HILL