【11月22日 AFP】プロバイオティクスは、全世界に数十億ドル規模の産業を生み出しているが、21日に発表された新たな研究結果では、子どものウイルス性胃腸炎に対してはプラセボ(偽薬)と同程度の効果しか持たないことが明らかになった。

 医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された報告書によると、2件の無作為臨床試験で同じ結論が得られたという。

 共同執筆者である米セントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)のフィリップ・タール(Phillip Tarr)教授は、「プロバイオティクスは、子どもには効果が見られなかった」と述べ、研究結果に「曖昧なところはない」と付け足した上で、「親たちはお金を無駄にするのはやめ、その分、子どもたちのために新鮮な果物や野菜を買う方がよい」と指摘した。

 現在、世界の主要な12の医療団体のうち5団体が、プロバイオティクスの使用を推奨している。プロバイオティクスは、子どもの体内でいわゆる「善玉菌」を増やすことにより、腸内環境を整え腸の健康を促進すると考えられている。

 米国で実施された臨床試験では、「カルチュレル(Culturelle)」という商品名で販売されている一般的なプロバイオティクスを用い、生後3か月から4歳までの子ども計971人を対象に実施された。

 子どもたちは全員、ウイルスや細菌感染によって発症する可能性のある、嘔吐(おうと)や下痢などの症状を伴う胃腸炎のため救急外来を受診した。

 これらの被験者らを無作為に2つのグループに分け、それぞれプラセボあるいはラクトバチルス・ラムノサスGGが配合されたカルチュレルのいずれかを5日間服用してもらった。

 その結果、プロバイオティクスを服用した子どもたちは、ブドウ糖の錠剤を与えられた子どもたちと比べて、罹患(りかん)期間や症状の重さに相違が見られなかった。

■「明白なメッセージ」

 一方、カナダで実施された別の臨床試験では、ラクトバチルス・ラムノサスR0011とL. ヘルベティカスR0052が配合された「ラシドフィル・ストロング(Lacidofil Strong)」という製品が用いられ、800人を超える子どもたちを対象に、同製品あるいはプラセボのいずれかを無作為に5日分処方した。

 ここでも両者の間にはごくわずかな相違しか見られず、研究チームは、統計的に有意ではなかったと述べている。

 報告書は、「最初の診察後、14日以内に中度から重度の胃腸炎が見られたのは、プロバイオティクスを服用した患者では414人中108人、プラセボを服用した患者では413人中102人だった」と指摘。

 プロバイオティクスを服用した患者のグループは、嘔吐や下痢などの症状、罹患期間、再診回数、合併症などのいずれにおいても、プラセボを服用した患者と比べて大きな相違は見られなかった。

 共同執筆者でアルバータ・ヘルスサービス(Alberta Health Services)の救急小児科医であるスティーブン・フリードマン(Stephen Freedman)医師は、この新たな2件の無作為臨床試験は、「一つにまとめると非常に強力だ」と述べ、「プロバイオティクスで治療された子どもたちには、広範囲にわたるすべての症状において、プラセボを与えられた子どもたちとまったく同じ結果が見られた」と続けた。

 また「患者を対象とした厳密で大規模な臨床試験を行うことにより、他の健康目的の利用法に関しても、プロバイオティクスの役割と利点を考える必要があるという明白なメッセージを今回の研究結果は伝えている」とも述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN