■「密漁をするか、誰かから盗むか、どちらかしかない」

 バンブレークさんの家族は、ケープタウンから約20キロ離れたハウトベイ(Hout Bay)の端にある、海辺沿いの貧しい集落に住んでいる。アワビやイセエビの密漁は数少ない収入源だ。

「最近、彼ら(当局)は撃ってくるようになった。恐ろしいよ」と、いとこのブルースさんは言う。「でも、どうしようもない。そうやって暮らしているんだから続けるしかない」「いとこを亡くしてつらいけど、続けるしかない。でないと、子どもたちが飢えてしまう」

 バンブレークさんにも子どもがいる。失踪当時、彼のガールフレンドはまだ妊娠中で、その後に女児を出産した。

 あの晩、バンブレークさんと一緒に出かけた仲間2人は、彼が当局者に撃たれたと述べ、ボートには弾痕もあると主張している。2人は現在、当局を相手取り訴えを起こしている。

 水産当局の報道官はAFPの取材に、同件は調査中としながら、発砲は「自衛目的でのみ行う」ことになっていると答えた。

 地域の活動家、ロスコーさん(32)は、密漁は地元の人々が貧困から脱出する数少ない手段だと話す。「(密漁など)誰もやりたくない。社会経済的な理由から、われわれはそうせざるを得ないのだ」「密漁をするか、誰かから盗むか、どちらかしかない。自分のリスクを承知でやっているんだ」

 ロスコーさんはまた、「資源保護を進めるには、住民への配慮が必要」と述べ、密漁行為への理解を示し、「我々はこれらの資源によって300年間、生き延びてきたんだ。今後300年もそうやって生き延びていく」と続けた。

 今年9月、南ア警察当局は、ボツワナに向かっていた1台のトラックを押収した。このトラックには計10キロ、末端価格にして40万ドル(約4500万円)相当のアワビが積まれていた。

 また昨年には、中国南部広州(Guangzhou)市で、アワビを含む海産物1億1500万ドル(約130億円)相当を購入しようとしていた密輸グループが摘発されている。(c)AFP/Amy Gibbings with Elizabeth Law in Beijing