DNAデータ、暗号化技術向上で「共有利用」可能に?
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■「秘密分散」
だが、研究チームが開発した最新の拡張可能な技術を用いると、各研究組織が所有する秘密データの共有利用が可能になるかもしれない。「安全な『ニューラルネットワーク』に基づく初のシステム」とベルガー教授が説明するこの技術は、秘密データを複数のサーバー間に分割して処理することで、全体としてのデータサンプルに基づく新たな関連性を見つけることを目的としている。
専有情報を含む可能性のある初期入力データについては、各組織が互いに共謀しない限りアクセスすることはできない。それぞれの寄与に基づいて処理結果が得られる仕組みだ。
今回の技術についてベルガー教授は、「秘密分散」と呼ばれる暗号化の枠組みに基づくものと説明する。研究では、分析を要する膨大な数の化合物やゲノムの処理を可能にするために最適化された最新の手法と人工知能技術を導入した。
ベルガー教授は「これまで完全に不可能だったことを実行できる」としながら、既存の暗号化の手法では膨大な計算量と通信コストが必要となっていたことを指摘する。それ以外にも、数百万個ではなく数千個のデータ点に対してしか機能しないという制限もあった。
この新たな技術を採用することで、「Ancestry.com」や「23andMe」などの主要な家系調査サイトが所有するデータベースを研究者らに公開したり共有したりすることが可能になると考えられる。
登録されているDNA特性データは、Ancestryで1000万件以上、23andMeは500万件以上に上る。ベルガー教授は、今回の研究結果について両社と連絡を取っていることを明らかにした。
Ancestry、23andMe、MyHeritageなどの家系調査サイトは、身体データや系図データのほかに家系内のがんの病歴などの医療データも提供する。研究者らが特定の遺伝子変異との照合研究を行いたいと考えているのが、この種の情報だ。
だが、これらのデータが「悪者」の手に渡るとどうなるか。ハッカーらが不正目的で情報を悪用するかもしれない。もしくは保険会社などが顧客を差別待遇するために情報を使用したらどうなるだろうか。
米国立衛生研究所(NIH)の生命倫理学研究者ベンジャミン・バークマン(Benjamin Berkman)氏は「人々はゲノムのプライバシーに関して大きな不安を抱いている。遺伝子検査を受けたり研究に参加したりするつもりがない人々はこの点を理由として挙げている」とコメントした。(c)AFP/Ivan Couronne