【10月18日 AFP】全15ページにも及ぶ投票用紙に、800人以上の候補者の顔写真がずらりと並び、その中からたった1人を選んで投票する──20日にアフガニスタンで行われる議会下院選挙で、首都カブールの有権者はこんな難題と取っ組み合わなければならない。しかも、投票所は過激派に狙われやすい危険な場所だ。

 3年も先送りされてきたアフガニスタン下院選には、全土で2500人超が立候補している。うち3分の1が、全人口の約2割が集中するカブール州選挙区からの出馬だ。一選挙区からの立候補者数として国内最多で、投票用紙はさながら新聞のようだ。

 有権者1人が投じられるのは1票だけ。タブロイド判とほぼ同サイズの分厚い投票用紙から、これだと思う候補者を選び出す作業には、相当の時間がかかるだろう。

 旧支配勢力タリバン(Taliban)やイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が投票所を襲う危険の高い状況では、理想的な選挙環境とは到底いえない。過激派は、選挙を「悪意に満ちた米国の謀略」と呼び、投票所や選挙管理委員会を標的に攻撃を仕掛けると宣言している。

■「ライオンの絵」で有権者にアピール

 候補者たちも有権者にすんなり選んでもらえるよう、さまざまな工夫を凝らしている。州内各地の街灯や掲示板、塀などに選挙ポスターを張り、各自の届け出番号や投票用紙の記載ページを宣伝。デジタル処理で見栄えを良くした顔写真をポスターに使っている候補者も珍しくない。

 届け出番号と一緒に、ヤシの木やライオン、眼鏡などのイラストが描かれているのは、読み書きのできない有権者のためだ。

「変化」や「正義」を推進するという高尚なスローガンから、「道路は金ぴかに、学校はダイヤモンドで建て、大学はエメラルドからつくる」などというばかばかしい提言まで、多彩な公約を掲げた候補者たちは、わずか33議席の割り当てをめぐって激しい選挙戦を繰り広げている。

 独立選挙委員会(IEC)によると、カブール州の有権者数は160万人を超え、有権者数でも国内最多の選挙区となっている。だが、登録有権者のうち相当数は偽の身分証明書を使った不正行為によるもので、投票を偽造するのが目的ではないかと多くの人が疑っている。

 1人が2回以上投票する不正は生体認証機器で回避する予定だが、作動不良や、そもそも全国5000か所の投票所の全てには機器が行き渡らないのではないかとの恐れが指摘されている。(c)AFP