■怪しい仕事

 モデルを始めたときはまだ学生だったというクララさんは、パリ・ファッションウィークに初めて関わったときのことを振り返り、そのときに経験したことを次のように語った。

「エージェンシーから車を1台与えられた。民泊仲介サービスのエアビーアンドビー(Airbnb)の大きなアパートの1室に他のモデルたちと一緒に詰め込まれ、みんなで車をシェアして会場と部屋とを行き来した」

「運転手に1日300ユーロ(約3万3000円)の支払い(の義務)が発生していたことを知ったのは、ずっと後になってからだった。そういう内容の契約書に事前にサインしてしまっていたため、イベント終了後には3000ユーロ(約33万円)の借金が残った」

 その後、ニューヨーク・ファッションウィークにも出演したが、借金はさらに膨れ上がったという。

「外国から参加するモデルはみんな、借金からスタートする。就労ビザを取るのにとてもお金がかかるから」

「ニューヨークでは、『モデル・アパートメント』をあてがわれた。他の3人と相部屋で、エージェンシーに1晩50ドル(約5600円)を支払った。キャスティングと同時に体調をひどく崩してしまったため、本番にはほとんど出演できなかった。最後は8000ドル(約90万円)の赤字となった」

「パリとニューヨークのエージェンシーとは、それ以降もたくさん仕事をしているが、彼らへの借金はいまだに残っている。例えば出演料1100ユーロ(約12万円)のパリの大きなショーに出ても、自分の手取りは400ユーロ(約4万5000円)だけ。それも借金の返済に持っていかれてしまうので、(お金を)目にすることなどない」

 それでもクララさんは、「貧しい家庭から16歳でやって来て、ほとんど英語を話さない」多くのモデルたちと比べると、自身の状況は「特にひどいわけではない」と強調する。

 AFPの取材に応じた他のベテランモデル2人も、稼ぎの大部分はエージェンシーに持っていかれると話し、モデルは借金の「奴隷」だと説明した。彼女たちの話では、一番搾取されやすく、不当な契約を結ばされがちなのは、現在出演モデルの大半を占めている東欧とブラジル出身者だという。