■毅然とした援助の手 家庭会議が運命を変える

 袁さんが在籍している学部の一年の学費は、雑費と合わせて約1万7800元(約29万円)だ。袁さんが入学した2015年は、実家のある福建省武夷山(Wuyishan)の慈善機構から1万元(約16万3000円)の援助を得て、これに、地元政府から3000元(約4万9000円)の補助と、親せきなどからもかき集め、ぎりぎり必要な費用を工面した。

 16年、袁さんが2年生になる時に、実家が困窮。中秋節の前に退学手続きをし、実家に戻る列車に乗った。

「両親とも身体障害者。家には小学校に通う弟がおり、畑で採れるわずかばかりの作物と父親のアルバイトで暮らす毎日」と袁さんは語る。地元から支給される奨学金は6000元(約9万8000円)、学校からの奨学金を合わせてもまだ足りない。

「学校の先生は何回も、何とかするから退学だけはしないようにと言ってくれた。父からも続けるように言われたが、3年間の学費は、我が家にとっては天文学的数字だったので諦めるしかなかった」という。

 袁さんの退学の一幕は、まもなく補導員助手をしていた李さんの知るところとなる。袁さんが退学後、補導員から状況を聞いた李さんは、非常に惜しいことだと考え、同じ日の夜のうちに、広州で働いている父親と連絡を取り相談をした結果、袁さんが最後まで学業を全うできるように援助することを決めたという。

 16年の中秋節の後、李さんは父親と共に補導員に対し、袁さんの学費として2万元の現金を渡し、余分なお金は袁さんの生活費として充てるよう依頼するとともに、今後3年間の学費負担を約束した。父子は、援助者が誰なのかを絶対に袁さんに教えないよう補導員に依頼した。「彼女の自尊心を傷つけないためにも、匿名にすれば、袁さんの心理的圧力が軽減できると考えました」と語った。

■恩人が分からないままつづった感謝の手紙

 袁さんは2年来、援助者の情報を知ろうとしたが、補導員が李さん父子との約束を守ったため、真実を知ることはなかった。この間、袁さんは毎年一回、宛先の無い感謝状に1年間の学習状況と感謝の気持ちをつづった。

 袁さんは、「恩人を探し出すことができなかったので、感謝状を書いて補導員に手渡してもらうしか方法は無かった、頑張って勉強をして良い仕事について恩返しをしたいと思う」と語った。(c)東方新報/AFPBB News