【9月25日 AFP】インドネシアの18歳の青年が小屋のついた小さな漁労用のいかだに乗ったまま7週間漂流し、約2500キロ離れた西太平洋のグアム(Guam)島沖で救出されていたことが分かった。青年の家族が24日、明らかにした。

 この青年はアルディ・ノフェル・アディラン(Aldi Novel Adilang)さん。恐怖の体験は、インドネシアのスラウェシ(Sulawesi)島の約125キロ沖にいかりを下ろしていた小さな漁労用のいかだに一人で乗り込んで作業をしていた7月半ばに始まった。

 漁労用のいかだは「ロンポン」と呼ばれるもので、インドネシアの伝統的な漁業で使われる。人を乗せずにブイやロープで固定されることが多い。

 アディランさんの仕事は魚をおびき寄せるためロンポンの明かりをともし続けることだった。ロンポンの所有者は週に一度、食料、飲料水、燃料やその他必需品を届けにくることになっていたという。

 地元メディアによるとアディランさんが乗っていたロンポンにはエンジンはついておらず、長いロープで海底に固定されていたが、強風で係留装置が外れて漂流し始めた。

 栄養不良に陥ったアディランさんのロンポンの脇を10隻ほどの船が通り過ぎて行った。8月31日にアディランさんはパナマ船籍の船にグアム沖で救出され、同船の目的地であった日本に到着した。

 在大阪インドネシア共和国総領事館のミルザ・ヌールヒダヤット(Mirza Nurhidayat)総領事が英字紙ジャカルタ・ポスト(Jakarta Post)に語ったところによると、数日分の食料しか持っていなかったアディランさんは魚を取って生き延びた。料理用の燃料ガスがなくなるとロンポンの木製の柵を燃やして魚を料理した。水は海水でぬれた服を吸って飲んだ。

 アディランさんは9月8日、家に戻った。試練にもかかわらず健康状態は良好だという。アディランさんは4人きょうだいの末っ子。遭難の知らせを聞いてショックを受け、真剣に神に祈ったという母親は「息子は9月30日に19歳になります。みんなでお祝いするつもりです」と語った。(c)AFP