【9月21日AFP】世界反ドーピング機関(WADA)は20日、セーシェル・ビクトリアで理事会を開き、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)の資格停止処分を解除した。これにより、同国のアスリートが競技大会に復帰する道が切り開かれたが、この決断はスポーツ界における薬物との闘いに「裏切り」と「暗い影」を投げかけるものとして、猛反発の声を巻き起こしている。

 WADAのクレイグ・リーディー(Craig Reedie)会長はコメント文を発表し、「本日、WADA理事会は賛成多数により、厳しい規定を設けている世界ドーピング防止規程(WADA Code)にRUSADAが準拠しているとして、同機関に対する資格停止処分の解除を決定した」と述べた。

 リーディー会長によると、この決定は「明確なスケジュールに従って、前モスクワ研究所のデータと検体をWADAに提出するという条件つき」とされており、この誓約が履行されない場合、WADAは再びRUSADAに処分を下すことになっている。

 RUSADAの資格停止処分が3年ぶりに解除されたことを受け、ロシア政府は検査手順の改善を図った同国当局の「とてつもない努力」の成果だと拍手で歓迎した。しかしながら、今回の決定に対しては、すぐさま痛烈な批判の声が相次いだ。

 反対票を投じた理事2人のうちの1人であるWADAのリンダ・ヘレラン(Linda Helleland)副会長は、RUSADAの制裁を解除する決断は「反ドーピング・ムーブメントの信頼性に暗い影を投げかけるもの」とし、「クリーンなアスリートに加えて、クリーンなスポーツを信じている人々を代表して失望感を表明する」というコメント文を発表した。

 米反ドーピング機関(USADA)は先日、RUSADAの処分解除を第三者グループから勧告されたことをWADAが明らかにしたことを受けて、RUSADAの資格回復は「世界のクリーンなアスリートに大きな打撃を与えるもの」と批判した。

 WADAの態度軟化はアスリートや世界中の反ドーピング機関から猛反発を引き起こしており、各国の反ドーピング機関はWADAが国際オリンピック委員会(IOC)の圧力に屈したと非難している。

 ロシアのドーピング問題が発覚したのは、同国反ドーピング研究所の元所長グリゴリー・ロドチェンコフ(Grigory Rodchenkov)氏の告発がきっかけとなっていた。同氏の弁護士を務めるジム・ウォールデン(Jim Walden)氏は、同日承認されたWADAの決定に対していち早く激しい批判の声を上げ、「ロシアの資格を回復させたWADAの決定は、五輪の歴史において、クリーンなアスリートに対する最悪の裏切りだ」と述べた。(c)AFP