■文化的な対立を生まずに文化に関わる

 多くの企業は、トランプ政権の誕生以前から、マイノリティの人権や地球温暖化などの社会問題を重視する姿勢を示し、そうしたことに関心を持つ人々をターゲットにキャンペーンを展開するようになっていた。

 その傾向は、一国のリーダーとしての従来の役割を公然と放棄し、自身の政治的地盤のご機嫌取りに終始する大統領に反発するかのように、2016年の米大統領選以降はさらに強くなった。

 アップル(Apple)やマイクロソフト(Microsoft)などのIT企業は、とりわけトランプ氏の移民政策に対して批判の声を上げ、幼い頃に親に連れられて米国に不法入国した「ドリーマー」と呼ばれる人々を国外退去処分とする政策に反対した。

 米デルタ航空(Delta Air Lines)も2月、米フロリダ州パークランドの高校で起きた銃乱射事件を受けて、NRAの会員向けの割引サービス契約を打ち切った。これには、銃規制反対派からの猛反発が起き、ジョージア州議会の議員らは、デルタ航空を税控除の対象から外した。それまで年間約4000万ドル(約45億円)の節税になっていたとされるものだ。その一方で、米ジョージア州知事は7月、デルタに対する税の徴収を一時的に止めると発表。こっちはデルタ航空にとって有利に働いた。

 その他、デルタ航空のエド・バスティアン(Ed Bastian)CEOは、その対応を評価され、経済誌「フォーチュン(Fortune)」の「世界で最も偉大なリーダー」の一人に選ばれている。

 PR会社エデルマン(Edelman)のグローバル戦略責任者デービッド・アルマーノ(David Armano)氏は、同社の顧客企業には、論争の的となる話題を直接取り上げる前に慎重に検討するよう促していると話す。

 そして「多くはちゅうちょする」としながら、「自社で話題にするのがふさわしいと思える重要な問題に、どうすればもっと関与でき、働き掛けることができるのかという欲求がある」のは確かだと指摘し、そうしたブランドのアプローチが、「文化的な対立を生まずに文化に関わる」上でプラスに作用するケースは多いと説明した。(c)AFP/John BIERS