■「本当に驚くべきこと」

 この結果は「まったくの予想外だ」と、レイ氏は表現した。

「ウチワシュモクザメの消化器系は他の厳格な肉食性の近縁種と非常によく似ているので、まるで雑食動物のように振る舞っているという事実は本当に驚くべきことだ」と、レイ氏は述べた。

 海水や汽水(淡水と海水が混じり合った水)中で生育する海草藻場は、地球上で最も広く分布する沿岸生態系だ。藻場は水をろ過したり、大気中の過剰な二酸化炭素(CO2)を吸収したりする助けになる。また、数千種に及ぶ魚や無脊椎動物の生息地や稚魚の生育地を提供する。

 これらはウチワシュモクザメ自体の常食の大部分を占める。研究チームによると、ウチワシュモクザメは消化の助けになる可能性のある酸性度の高い胃を持っているという。

■生態学的意味

 米国のメキシコ湾(Gulf of Mexico)と大西洋(Atlantic Ocean)側の海域に生息するウチワシュモクザメは490万匹に上ると推定されているため、今回の結果は海草藻場の管理と保護に示唆を与えるものだ。ウチワシュモクザメが栄養素の再配分で担う役割は、これまで過小評価されていた可能性がある。

 サメの祖先に関する証拠はどれも厳格な肉食性だったことを示しているため、ウチワシュモクザメが草食を始めた時期については不明という。だが、今回の結果は他にも草食のサメが存在する「可能性がある」ことを示唆していると、レイ氏は話した。(c)AFP/Hazel WARD