【9月5日 AFP】「ロシア一のビートルズ(The Beatles)ファン」と呼ばれたコーリャ・バシン(Kolya Vasin)さんが、サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)で死去していたことが分かった。73歳だった。バシンさんにはビートルズの音楽にささげる聖堂を建てるという長年の夢があったが、かなわなかった。

 バシンさんは1960年代にロシアのアンダーグラウンド界の有名人となった。当時、ロック音楽は、旧ソ連当局から西側資本主義文化の好ましくない現象とみなされていた。

 バシンさんが1991年に創設したビートルズ博物館を擁する文化施設「プーシキン 10(Pushkinskaya 10)」は公式ウェブサイトで、「不幸にも、われわれの友であり同僚であるニコライ・(コーリャ・)バシンが8月29日にこの世を去った」と発表した。

 地元メディアは、8月29日にサンクトペテルブルク中心部にある商業施設の3階から飛び降りた男性が、バシンさんだったことが後に確認されたと報じた。

 バシンさんの友人ユリ・ルイバコフ(Yuli Rybakov)さんは、ビートルズ博物館のウェブサイトに追悼記事を寄稿。「コーリャの最大の夢は、ジョン・レノン(John Lennon)にささげる愛と平和、音楽の聖堂をサンクトペテルブルクに建てることだった」と述べた。

 旧ソ連当局は「ペレストロイカ(Perestroika)」と呼ばれた改革の時代に、そうした場所の設置を支援すると約束したが、実現することはなかった。

 ルイバコフさんは「(バシンさんが手紙を送っていた)地元当局も文化省も、彼の夢をかなえることは何もしなかった」と述べ、「多方面から拒否されて、バシンはつらい状況にあった。私たちの社会を支配する緊迫した雰囲気を受け入れるのに苦心していた」と振り返った。

 4日には、博物館がある建物に花を手向ける地元住民の姿が見られた。(c)AFP