■「外の人」には分からない問題

 今でもミャンマーで絶大な人気を誇るスー・チー氏は先月、シンガポールで演説し、国内の状況について次のように述べた。「ミャンマーは過渡期にある。私たちは、外から眺めていて、成り行きに影響されない人々とは異なる目でこの問題を見ている」

 国連が軍幹部の訴追を求めたことに呼応し、フェイスブックは前例のない措置を取った。ミン・アウン・フライン(Min Aung Hlaing)軍司令官と17人の軍幹部らのアカウントを停止し、52ページを削除したのだ。これらのアカウントのフォロワー数は1200万人近くに上っていた。

 ミャンマーでフェイスブックが使えるようになったのはごく最近だが、影響力は非常に大きい。フェイスブックは今回の措置について、「民族間、宗教間の緊張をあおる」目的で自社サイトが使われるのを防ぐためと説明している。昨年、ロヒンギャがバングラデシュに逃れた時は、ヘイトスピーチへの対応が遅く、内容が拡散されたとして批判を浴びていた。

■「軍事政権がかつて使っていた手」

 フェイスブックの措置は、その前日に軍幹部が国際刑事裁判所(ICC)に引きずり出される可能性が出た時よりも、ミャンマー国内ではるかに激しい反発を招いているようだ。軍幹部らの擁護に回り、司令官の写真を自身のプロフィール写真に使用する人も出てきた。

 人種差別的中傷や殺害予告まで受けた経験があるムスリムのジャーナリスト、アウン・ナイン・ソー(Aung Naing Soe)氏は、フェイスブックにはびこっていた有害な投稿は減ってきていると指摘する。

「そのような投稿は目立たなくなっているように思う」とし、「この国ではフェイスブックのアカウントを削除されてもいいと思う人はいない」と話した。

 一方、今回の措置が昔行われていたような検閲を思い起こさせると指摘する人もいる。ある女性医師は、「軍関係者のフェイスブックページが閉鎖されたのは、軍事政権がかつて使っていた手のようだ」と話した。「彼らはそうやって何十年間も国民の目と口をふさいでいた」

 だが、軍幹部については、「悪いことをしていないのなら、ICCの場に出て、事実をはっきりさせるべきだ」と付け加えた。(c)AFP