【8月31日 AFP】全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2018)は30日、男子シングルス2回戦が行われ、大会第30シードのニック・キリオス(Nick Kyrgios、オーストラリア)が4-6、7-6(8-6)、6-3、6-0でフランスのピエール・ユーグ・エルベール(Pierre-Hugues Herbert)を退け、3回戦に進出した。この試合では、問題児として知られるキリオスに対し、審判が椅子から下りて「君を助けたい」と話しかけ、同選手に肩入れしたとして物議を醸した。

 17番コートで行われた一戦でキリオスが第1セットを落とし、続く第2セットも0-3と劣勢を強いられると、プレーが冴えない同選手に対して主審のモハメド・ライアニ(Mohamed Lahyani)氏がしびれを切らす場面があった。キリオスはこの後、25ゲームのうち19ゲームをものにして勝利を収めた。

 キリオスは試合後、「審判はただ、僕の調子を心配していただけだ」とコメント。しかし、対戦相手のエルベールは、スウェーデン出身のライアニ氏の行為は一線を越えるものであり、自分を追い詰めようとしたと主張した。

 さらにこの一件で妙な誤解に拍車をかけたのは、全米オープンの主任審判を務めるブライアン・アーリー(Brian Earley)氏が、わざわざ椅子から下りたライアニ氏の行為について、観客の声でキリオスとのコミュニケーションが取れなかったからだと説明したことだった。大会責任者は、同審判の行為について特に悪意はなかったと強調している。

 ライアニ氏はベンチに座っていたキリオスに近づくと、第2セットに士気が欠けていた23歳に説教を始めて観客を驚かせた。動画では同審判が「君を助けたい」、「こんなのは君らしくない。私には分かっている。君のテニスは最高だ」と話しているように聞こえており、ソーシャルメディアでは審判が片方の選手に肩入れしていると疑問の声が噴出した。

 第2セットで2-5とリードを許したキリオスは、チェンジオーバーの際に頭に手を回しながら椅子にかがみ込み、タオルをかんだり眉毛をいじくりまわしたりするなど、2回戦敗退の危機に落ち着かない様子をみせていた。試合後の記者会見では、この話題を一蹴するかのように「審判は僕のことを好きだと言っていた。励まそうとしてくれていたのかは分からない」と話した。

「審判は調子が良くなさそうだと話していただけだ。確かにプレーは良くなかった。彼の言うことはあまり聞こえていなかったけれど、確かに調子は良くなかった」と語ったキリオスは、今回の予定外の会話でライアニ氏が処分を受けることがあれば残念だと強調した。

 一方のエルベールは、ライアニ氏が職務を逸脱したとして、「審判が彼に話しかける必要はまったくない。言葉をかけるとすれば、試合に集中しろということだけだ。このまま続ければ警告を与えることになるからだとか、そういう感じの言葉だ」、「椅子の上からでも話しかけられるはずで、下りる必要性はない。動画で確認されたような言葉を話す必要はない。あれは審判の仕事ではない。彼はコーチではなく審判なんだ」と主張した。

 キリオスは3回戦で、通算5度の大会制覇を誇る第2シードのロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)と対戦する。(c)AFP/Dave JAMES