■生き残りをかけて闘うジャーナリズム

 米首都ワシントンD.C.を拠点とする国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative JournalistsICIJ)のジェラード・ライル(Gerard Ryle)代表は、報道機関の採算モデルがそうしたネット大手によって打ち砕かれる中、調査報道もまた逼迫(ひっぱく)した状況に置かれていると指摘する。ICIJは、世界の企業や個人によるタックスヘイブン(租税回避地)取引に関する文書群である「パナマ文書(Panama Papers)」や「パラダイス文書(Paradise Papers)」を暴露したジャーナリスト連合だ。

 AFPの取材にライル氏は、「ジャーナリズムは死にかけている。取材を支えていた広告収入による収益モデルは、調査報道など意に介さない」と述べ、ジャーナリズムが生き残りをかけて闘っている現状に触れた。

 そして、「事業は縮小され、最初にカットされるのはコストの高い調査報道だ。調査報道は多大な時間がかかる上、リスクも高い」としながら、「取材をしても、いつも記事にできるとは限らないし、記事にしたらしたで、真実を公にされたくない大企業と裁判で争うことになるなど、法的防衛でも非常に高くつく可能性がある」とも説明した。

 現状では調査報道は大幅に減り、スキャンダルが見過ごされつつある。これは民主主義にとって大きな懸念だとライル氏は言う。「若いジャーナリストには、何でもいいからもっと記事を書けと大きなプレッシャーがかかっている。いわゆる、チャーナリズム(粗製乱造ジャーナリズム)だ。プレスリリースや声明にちょっとだけ手を加え、とにかく早く記事を書く。ファクトチェック(事実検証)をしたり、聞き込みや探りを入れる時間はない」