【8月30日 AFP】先進国では数少ない妊娠中絶を原則違法としている韓国で今月、中絶手術に関する規則が厳格化され、中絶手術が「非道徳的な診療行為」と規定された。これに2000人近い産婦人科医が抗議し、中絶手術をボイコットする事態に発展している。

 韓国では、レイプや近親相姦(そうかん)による妊娠、または母体に命の危険がある場合にしか中絶手術は認められていない。ただ、中絶を禁止する法律は形骸化しており、現実には中絶手術は一般的に行われている。

 最近行われた調査によると、妊娠経験のある女性の5人に1人が中絶手術を受けたことがあり、法律の例外事由に基づいて中絶したと回答した人はそのわずか1%にすぎなかった。

 1953年に施行された中絶禁止法では、中絶を受けた女性に罰金と懲役1年、手術を行った医師に最大2年の懲役を科すと規定されているが、この法律は論争を呼んでおり、憲法裁判所で現在、違憲審査が行われている。

 しかし、保健福祉省は今月になって規則を改定。保健当局は中絶手術を行った医師に対し、裁判などを経ずに1か月の資格停止処分を下すことが可能となった。また、患者に対する性的暴行と共に妊娠中絶を「非道徳的な診療行為」と位置付けた。

 産婦人科医およそ2000人を抱える産婦人科医団体は、「われわれは政府が非道徳的な診療行為と定義した中絶手術の実施を断固拒否する」としており、団体幹部はAFPの取材に対し、医師たちを非道徳的とみなすことに「ただただあきれている」と語った。

 妊娠中絶を求める患者は貧しかったり未成年だったりするケースが多いといい、そうした境遇の女性が出産を強いられるのであれば、果たしてそれは道徳的と言えるのだろうか、と団体幹部は疑問を呈している。

 団体幹部は「われわれは妊娠中絶の合法化を求めているのではない」と指摘し、「これは妊婦に選択する権利を与えるという話だ」と強調した。(c)AFP