■「失われた世代」のリスク

 キャンプでの生活が始まってから、膨大な数の子どもや若者が学校での教育から遠ざかってしまっている。国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は、子どもたちが「失われた世代」になるリスクが大きいと警告している。

 アラファトさん(18)は、得意な科目である英語を忘れないよう、入手可能な英語の本をかたっぱしから読みあさっている。しかし、勉強に遅れが生じていることは否めず、教師になるという夢を叶えられないのではと不安になるという。「勉強をしたくても、ここには学校がない。将来どうなるのか分からない」とAFPの取材では心配そうな表情を見せた。

 難民であふれかえるキャンプ周辺には、それを取り囲むように検問所が設けられている。地元警察によると、昨年8月に難民の流入が始まってからこれまで、脱出を試みた5万8000人以上が捕まっているという。

 シャムス・アラムさん(28)もそうした難民の一人だ。キャンプ内で仕事を模索したが競争が激しく、最終的に規則を破らざるを得なくなったのだという。結局、アラムさんの脱出は成功しなかった。AFPの取材では、「ここでは何もすることがない。外に働きに出ることもできない。何かをしたいだけだ」と不満をぶちまけた。

■「家族が恋しい」

 キャンプ敷地内の丘の上に大勢の人が集まっていた。彼らは毎晩ここを訪れ、ミャンマーとつながる携帯電話の電波と家族からの知らせを待っているのだ。その中の一人、アブドル・ゴファーさんは、過去1年間毎日ここに来て、遠くに見えるミャンマーの山の方を向き、電波を探し続けているのだという。

 うまいこと電波を拾うことができたら、急いでテキストメッセージを送るか、兄弟や義理の母に電話をすると話すゴファーさん。幼い娘がよく聞き取れない言葉を受話器越しに発することもあると説明しながら、「家族が恋しい」と語った。(c)AFP/ Nick PERRY and Redwan AHMED