■親子げんかの末に

 7月31日の夕方、蘇州市(Suzhou)肥新村(Feixin)の街道は、人と車でにぎわっていた。車の警笛と物売りの声が混じり合う。暑さの残る中、少年は短パンに上半身裸の格好で、街道脇の野菜市場に入って行った。両親に代わって商品代金を回収しようとしたのだ。

 その日、市場の角の水産品売り場は在庫がなくなってしまい、両親に約50キロの魚を配達してほしいとの依頼があった。凡森さんの母親は、「この客は同郷の親せき。互いに助け合い、低い値段で売り買いしている」というが、息子はこの客とけんかになってしまった。

 父親の長青さんは二日前、売値を11.5元(約185円)から11.3元(約182円)に値下げしていたのだが、凡森さんは知らされていなかった。

「値段を知らないのなら、電話で聞けばいいじゃあないか。こんな簡単なこともできないなんて…」。父親はその場で息子を怒鳴りつけ、引っ張って家まで帰って行った。

 凡森さんは、怒りで顔色が赤黒くなり、大きな声で「俺は間違っていない、どうして俺を責めるんだよ!」と怒鳴り返した。

 父親は息子を指さしながらほえ始め、息子は父親を押し返した。二人は互いにもみ合い、本格的なけんかに。数分後に周囲の人々によって引き離されるまで、けんかは続いた。

 凡森さんの妹は、兄が市場に戻ってきた後、地面に座り混んで涙を流すのを見ていた。兄はまもなく立ち上がり、倉庫に入っていき、追いかけて行った妹が目にしたのは、緑色の液体が三分の一ほど入った瓶を手に持つ兄の姿だった。

 父親が駆け付けるとただちに息子を電動リヤカーに乗せ、病院の救急センターに運び込んだ。緊急処置で行われた胃洗浄により、一命を取り留めた。

「喉と内臓が燃えるようだよ、農薬を飲んで後悔してるよ」。父親に向かって言った。

 両親は息子のそばを離れず看病し、8月4日昼、息子を大学病院に転院させた。診断は、「少なくとも30~40ミリの農薬原液を飲んでおり、重度の中毒」。腎臓と肺の機能障害が悪化し、尿毒症となっているほか、複数の併発症も起こしていた。

「俺の命は、大丈夫なのかな?」。少年は、病床で付き添う両親に尋ねる。「必ず治る、金は工面するから心配するな」と父親が答える。

「一時の衝動で、バカなことをしたものだ」。少年は顔を反対側にそむけ、ため息をついた。(c)東方新報/AFPBB News