【遣唐使から21世紀まで、旅する漢籍(下)】本への愛は言語超え
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■「大事にしてくれるなら本望」
信頼を得る過程で、古書好きという共通点が、言葉よりも大きな力を持ったこともある。京都で訪ねた書店は、まさに店じまいをしようとしていた。「店主は70代のお年寄りで、私は同僚と本の整理を手伝いました」
一緒に作業をする中で、店主は於氏の本に対する思いを認め、店内の古書を譲ってくれたという。
もちろん、中国書店の信用もあった。「中国書店で大事にしてくれるなら、本望です。日本にあっても倉庫に積んでるだけですから」。老店主は、於氏にこう語ったという。
東京・神保町の古書店「一誠堂」で2013年、古書の即売会が開かれた。そこには12世紀前後の中国南宋時代に出版された詩集『唐人絶句』22冊中21冊が、4億6000万円で売りに出された。
宋版の書籍は極めて貴重で、中国では大半が散逸している。杜甫が李白に贈った七言絶句も収録されたその詩集には、天文学的な価格がつけられていた。
宋版の史書や詩集は、日宋貿易や留学僧によって日本に持ち込まれ、多くが寺院で保存されていた。『唐人絶句』がなぜ一誠堂にあるかは明らかになっていないが、少なくとも書店に40年保管されていたという。
於氏も以前からこのことを知っており、即売会に合わせて訪日し、実物を見て購入を決めた。同店店主とも以前から交流があり、「即売会では一冊一冊、巻頭から最後まで2時間以上確認しました。一般人には得られない機会です」という。
結局、日本で保存されていた『唐人絶句』は日本の文化財であるとして購入はかなわなかったが、その後も色々と助けられています」という。(c)東方新報/AFPBB News
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