米実業家がアーセナルの全株式取得へ、ファンは「恐怖の一日」と戦々恐々
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【8月8日 AFP】イングランド・プレミアリーグ、アーセナル(Arsenal)の少数株主だったアリシェル・ウスマノフ(Alisher Usmanov)氏が7日、保有していた株式を5億5000万ポンド(約791億円)で売却する申し出に応じ、米国人実業家のスタン・クロンケ(Stan Kroenke)氏によるクラブの全株式取得が間近と迫った。
クロンケ氏は、自身を筆頭とする企業クロンケ・スポーツ・エンタープライゼス(KSE)社を通してアーセナルの株式を67パーセント所有しており、今回ウスマノフ氏に対してレッド・アンド・ホワイト・セキュリティーズ(RWS)社が所有する30パーセントの株式を買い取る申し出を行っていた。
ウスマノフ氏は英通信社プレス・アソシエーション(PA)で公開した発表文の中で、このオファーを受諾したことを明かしたが、なぜこのタイミングで現金化を選択したのかは説明しなかった。
米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のロサンゼルス・ラムズ(Los Angeles Rams)の会長を務めるクロンケ氏は、オーナーが一人になったことでクラブは恩恵を受けるだろうと話したが、ファンは「恐怖」の一日になったとこぼしている。
近年ではカップ戦で成功を収めているものの、アーセナルはプレミアリーグでライバルチームの後塵を拝しており、欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)でも長い間決勝トーナメントに勝ち上がることができていない。
プレミアリーグを最後に制したのは2004年であり、昨季は優勝したマンチェスター・シティ(Manchester City)に勝ち点37差をつけられ6位に甘んじた。
アーセナルは今年5月、チームを22年間率いたアーセン・ベンゲル(Arsene Wenger)前監督が退任しており、新しい環境に適応しようとしているところである。パリ・サンジェルマン(Paris Saint-Germain、PSG)からウナイ・エメリ(Unai Emery)監督を招へいしたアーセナルは、新シーズンの開幕戦で12日にシティと対戦する。
クロンケ氏は2007年以降、保有株式を徐々に増やしながらアーセナルの共同経営者を務めてきた。
証券取引所の規制により、クロンケ氏はアーセナルの株式を持つ残りの少数の保有者にも同様のオファーを提示する必要がある。こうした株式のほとんどは、サポーターが持っているわずかなものとなっている。
現時点ではそのような株主がこのオファーを受け入れるのは義務ではないが、もしウスマノフ氏が保有していた割合をクロンケ氏が手に入れると、これらの株式は強制取得となる。
これによりKSE社は残された最後の株式を取得し、クラブの完全なる買収を実現することになる。
アーセナルのファン団体「アーセナル・サポーターズ・トラスト(AST)」は、強い表現で今回の株式の売買に反対した。
「クロンケ氏がクラブを私有化することで、サポーターがアーセナルの株式を所有することはできなくなり、管理者としての価値観を守る彼らの役割も失われる」
ASTはまた「今回の株式購入がローンによる支払いであることを極度に懸念している」と付け加えた。
発表から2時間も経たないうちに、英国内ではツイッター(Twitter)で「#KroenkeOut(出ていけクロンケ)」というハッシュタグがトレンド入りした。(c)AFP/John WEAVER