■未来の米市民

 同医療施設では現在、子犬15匹が飼育されていて、健康状態を確認後スラブチッチ(Slavutych)の幼犬施設に移されることになっている。チェルノブイリから約50キロ離れたこの町は、原発事故後、主に発電所作業員のために開発された。子犬たちはスラブチッチで最長6週間飼育された後、米国に渡り里親に引き取られる。

 米国にいるCFFの支援者が、犬の里親探しや里親家庭への犬の輸送などを手伝っている。

 昨年始まった「チェルノブイリの犬」プロジェクトは米国の里親に生後1歳未満の犬を譲っている。成犬はワクチン投与や不妊手術を施した上で、最初に保護した場所で放してやる。

 里親になることを希望する人はまずネットで申し込み、何回もの面接とCFFによる家庭訪問を受けなければならない。ヒクソンさんによるとプロジェクトへの反応は上々で最初の200匹に対して短期間に300人から応募があった。ヒクソンさんは、今後2年で子犬200匹の里親を見つけ、なるべくたくさんの犬を処置するのが目標だと語った。

 スラブチッチの保護施設でドッグトレーナーをしているナタリヤ・メルニチュク(Nataliya Melnychuk)さんは、「この子はもうすぐ米国民ね」と語った。ナタリヤさんが示したその黒白の犬は現在、書類上の手続きが終わるのを待っており、もうすぐ米シカゴに運ばれるという。

 この保護施設で過ごす子犬たちには厳密な日課がある。散歩と食事の合間に追加のエクササイズとマッサージの時間があり、「ビューティーサロン」まである。「おそらくウクライナで一番世話を焼かれている犬たちだろうね」とヒクソンさんは言う。