【6月25日 AFP】サッカー日本代表がW杯ロシア大会(2018 World Cup)で優勝する可能性は低いかもしれない。しかし、ファンは試合後の掃除など、その模範的な振る舞いでピッチ外の王者であることを示している。ここ数年の国際主要大会で起きた暴力行為を浄化するような彼らの行為には、他の国のファンからも感嘆の声が上がっているだけでなく、近年は欠かすことのできないW杯の風物詩となっている。

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 19日の試合でコロンビアを2-1で破る番狂わせを演じた日本代表は、W杯の舞台で初めて南米チームから勝利を収めたアジア勢となった。試合後に日本のファンはごみをかき集め、代表のチームカラーである青のプラスチック袋にそれを詰めた。コロンビアやセネガルのファンは、彼らの振る舞いに感銘を受けたようで、両国のファンは日本にならい試合後に掃除をしており、この影響で今大会は史上最も整然としたW杯になる可能性もある。

 日本ファンの振る舞いには海外メディアも関心を寄せている。エカテリンブルク(Yekaterinburg)で行われたセネガル戦の前日の23日には、英大衆紙サン(The Sun)の記者が、イングランド・プレミアリーグのサウサンプトン(Southampton FC)でプレーする吉田麻也(Maya Yoshida)にサポーターについて質問すると、吉田は「日本を代表するのはチームだけではありません。ロシアに来ているファンも同じです。そういう行為が世界中から賞賛されていることを、とても誇らしく思っています」と答えた。

■「暗黙のルール」

 他の国の人にとっては驚きかもしれないが、日本のサッカーファンは国内リーグの試合後も掃除している。こうした行動はカフェや映画館、コンサート会場など、公共のエリアでも見られる。日本代表の試合を観戦するためにロシアへ来たという男性は、試合後の掃除はファンにとって「暗黙のルール」だと話している。

「日本は選手だけではありません。ファンも含めたすべてが日本です。私たちは国を代表するために、自分たちの役割を果たす必要があります」という男性は、もしファンが散らかしたごみを捨てなかったらどうするかと問われると、「日本人はシャイなので何も言いませんよ」と笑いながら答えた。

 また、負けた時は相手チームや選手に対して暴言を吐いたり、自分のチームを批判したりするかと質問すると、「私はしませんが、叫んだり、ののしったりする日本人もいます。でも、彼らも優しめな罵詈(ばり)雑言を使い、差別したり、脅したりはしません」と返答した。

 W杯を観戦するファンの拠点になっているエカテリンブルクのバーでビールを飲んでいた別の日本人男性2人にも話を聞いた。日本の国内リーグにはいわゆる「ウルトラス」がいて、右派のサポーターも存在するが、男性の一人はそれが日本のフーリガンだという考えには、腕を交差して「ノー!」と強調し、「日本人は強くありません」と続けた。

 また、別の男性は「次の人のために場所をきれいに保つこと、環境を大切にすることは日本の伝統的な価値観」だと話した。新潟から来たというこの19歳の男性は、日本で行われるサッカーの試合には女性と子供も多く訪れるため、自身は暴言は吐かないようにしているとしながらも、正当な理由があれば少しの暴言は気にしないだろうという。「それは日本のサッカー文化の発展に役立ちますし、ある次元においてはよりエキサイティングにします。しかしバランスは必要です」 (c)AFP/Peter STEBBINGS