【6月19日 AFP】アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相率いる与党の保守政党連合内の強硬派は18日、メルケル首相に対し、2週間以内に難民登録申請に関する規則を強化するよう最後通告を出した。実現しなければ同国は政治危機に陥る恐れがあり、欧州への波紋は避けられない状況の中、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領もツイッター(Twitter)投稿で火に油を注ぐ事態となっている。

 メルケル氏率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党、キリスト教社会同盟(CSU)の党首を務めるホルスト・ゼーホーファー(Horst Seehofer)内相は、今月28・29日に開かれる欧州連合(EU)首脳会議までの2週間のうちに、欧州内で移民の流入抑止に向けた取り決めを見いだすよう、メルケル氏に要求。それができなければ、国境警察に移民らを追い返すよう命じる構えを示した。

 メルケル首相は直ちに反論し、仮に欧州内で取り決めが見いだされなかったとしても、「自動的措置は講じられない」と指摘。ゼーホーファー氏と同氏率いるCSUに対し、政府の方針を決める最終権限は自分にあると警告した。

 トランプ米大統領はツイッターでこの危機に干渉し、「既に脆弱(ぜいじゃく)なドイツ政府の連立体制が移民問題に揺れており、ドイツ国民は自国指導部に背を向けようとしている」と投稿。さらに「欧州での移民問題で起こっていることが、わが国で起こってほしくはない!」と続けた。

 メルケル氏のCDUと長く統一会派を構成してきたCSUとの間の緊張が急激に高まる一方で、EU加盟諸国は再び移民問題をめぐり衝突している。きっかけとなったのは今月、移民630人を乗せた救助船の受け入れをイタリアが拒否したことだ。

 18日夜にメルケル首相との会談に臨んだイタリアのジュセッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相は、自国だけでは流入する移民に対応できないと強調。「イタリア国境は欧州の国境。われわれは欧州の責任と団結に関する分断に甘んじるよりも、複数の面で共に行動しなければならない」と警鐘を鳴らした。

 一方のゼーホーファー内相は、他のEU加盟国(多くの場合は欧州での最初の入港地となるイタリアやギリシャ)で登録済みの移民の受け入れ拒否を求めており、メルケル氏は同内相の要求と、前線に位置する諸国からの団結の呼び掛けとのバランスを取ることが求められている。(c)AFP/Ralf ISERMANN with Hui Min NEO in Berlin