■「過去の過ち」繰り返したくないノーベル賞委員会

 当時就任したばかりのバラク・オバマ(Barack Obama)前大統領がノーベル賞を受賞してから10年が経過した。この時の授賞をめぐっては「早すぎる」との見方が大勢を占めた。ノーベル賞委員会はこうした過去の過ちを繰り返すことをしたくないはずだ。

 これより以前の2000年には、当時の金大中(キム・デジュン、Kim Dae-Jung)大統領も同平和賞を受賞している。北朝鮮との和解への努力が評価されたのだ。しかし、授賞候補者を毎年公表しているノルウェー・オスロ国際平和研究所(PRIO)のヘンリク・ウーダル(Henrik Urdal)氏は、その努力はせいぜい「広報活動」キャンペーン程度にしかならかなったと指摘する。「おそらく(委員会は)かなり大きな成果が出るのを待ってから賞の授与について決めることになるだろう」

 スウェーデンのシンクタンク「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」のダン・スミス(Dan Smith)氏も、ノーベル賞について語るのは早すぎるとの見方に同意する。「今日の合意は素晴らしい最初のステップだが、道程は長く複雑だ。トランプ大統領のその他の決断、とりわけ地球の安全に不可欠なパリ協定からの離脱と、中東地域の安定に不可欠なイラン核合意からの離脱は、平和の構築にはかなりのマイナスだ」

■「受賞に一番値するのは文氏」

 朝鮮半島での非核化の進展が現実のものとなると、ノーベル賞委員会は大きなジレンマに立たされることになる。これまでの2人の軌跡をたどるとこれは当然のことだろう。

 1990年から2014年まで委員会の事務局長を務めたノルウェーのゲイル・ルンデスタッド(Geir Lundestad)氏は以前、「ノーベル賞は聖人への賞ではない」と発言したことがある。

 ルンデスタッド氏は12日、AFPの取材に対して、「この両首脳には数多くの問題がある。金氏は世界最悪の独裁者の一人。トランプ大統領も1945年以降に米国が築き上げ、多くが恩恵を受けてきた政治と経済の仕組みを壊そうとしている」と指摘した。

 他方で、スウェーデンの国際関係が専門のピーター・ウォレンスティーン(Peter Wallensteen)教授は、朝鮮の平和を理由に授賞が行われるとすれば、韓国の文大統領も含まれるべきだと述べる。そして「実際のところ、受賞に一番値するのは文氏だろうが、それではトランプ氏への侮辱となりかねない」と付け加えた。(c)AFP/Pierre-Henry DESHAYES